同一性保持権
著作者人格権には、公表権、氏名表示権、同一性保持権があります。このうち同一性保持権が争われた事件を紹介します(令和 6年 (ネ) 1431号 著作者人格権侵害差止等請求控訴事件)。「一審被告が、一審原告に無断でその内容を改変して第12稿を作成し、一審原告が有する第10稿についての著作者人格権(同一性保持権)を侵害した」として争われましたが、加筆修正することの同意がされていたと認定され、非侵害と判断されました。
(要旨)上記X5の証言は、上記内容にとどまらず、一審被告が 脚本家としての創作性を発揮して加筆、修正することを期待していたことにも及んでいるし、なにより一審被告としては、脚本家としての自らの名前を、出演を引き受ける俳優のみならず一般の映画鑑賞者に対して表示する以上、脚本家として加筆、修正を加えて納得のいく脚本を完成させよう とすることは当然予想されるところであって、そのことは一審原告自身も 理解していたものと考えられる。そして、一審被告が脚本家として加わる ことが決まった本件打合せ①において、一審被告は脚本家として名前が使われるだけで脚本家としての創作的な活動は不要であるとか、脚本家としての創作を制限するなどの話がされた事実が認められるわけではない上、現に上記のとおり、一審被告が第10稿に創作的部分が加わる加筆、修正 をしようとしていたことを一審原告は容認していたとしか理解できないか ら、脚本家として加わった一審被告がする作業が一審原告の脚本の歴史考証やこれに伴うチェック等にとどまるものに限定されていたようにいう一 審原告の上記主張は採用できない。
一審原告が作成した第10稿に本件変更を加えて第12稿を作成した一審被告の行為は、一審原告が同意している行為の範囲内で行われたと評価できる以上、その限度において、本件変更は一審原告の意に反する改変ではなく著作者人格権(同一性保持権)侵害には当たらないといえる から、著作者人格権(同一性保持権)侵害を理由とする一審原告の一審被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求は理由がないというべきである。