阻害要因

特許の審査基準において、進歩性が肯定される要素の一つとして、「副引用発明を主引用発明に適用することを阻害する事情があること」(阻害要因)があります。この阻害要因があることにより、当業者が請求項に係る発明に容易に想到できたことの論理付けを妨げる要因となります。

今回は、無効審判の有効審決に対する審決取消訴訟で、有効審決が維持された事件(阻害要因があるとして進歩性が肯定された事件)を紹介します(令和 6年 (行ケ) 10043号 審決取消請求事件)。

(要旨)甲2発明のせん断パネル型ダンパー10は、橋梁上部構造と橋梁下部構造とが平面視において二次元的に相対移動可能な橋梁支承構造の場合に、互いの向きを異ならせて複数設置され得るものである。これに対し、甲1発明のエネルギー吸収部材1は、建築物の架構の構面に沿って一方向から荷重が作用することを前提として、そのような荷重が面内方向に入力されるように2枚の金属薄板2を直列に配置するものであるから、甲1発明に甲2発明のせん断パネル型タンパー10の配置を適用する動機付けがない。
また、甲1発明の2枚の金属薄板2の向きを互いに異ならせるとすると、少なくとも一方の金属薄板2は荷重が面内方向に入力されない配置となるから、建築物の架構の構面に沿って荷重が面内方向に入力されることを前提とした甲1発明においてこのような構成の変更には阻害要因があるといえる。
したがって、甲1発明に甲2発明を適用することにより上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

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