技術常識
拒絶理由通知において、「~する点は技術常識である」という文言を見かけますが、通常は技術常識である根拠を示す必要があります。今回は、車両の発明である引用発明を、ドローンの発明である本願発明とすることが技術常識ではなく、困難性は認められないとする根拠を示していないとして、拒絶審決が取り消された審決取消請求事件を紹介します(令和 6年 (行ケ) 10049号 審決取消請求事件)。
(要旨)引用発明の車両は、電動機4の駆動出力によって、駆動輪が動力を路面に 伝えて走行するものであるから、車輪を有し、この車輪が回転して陸上を 走行する車であると認められる。
そうすると、車輪が回転して陸上を走行するものである引用発明の車両と、回転翼を回転させ大気中を飛行するものである本件補正発明のドローンとは、構造・移動形態が本質的に異なるといえる。そして、車両をドローンとすることが当業者の技術常識であるとも認められない。さらに、本件審決は、本件容易想到性判断部分において、「エンジンと発電用電動機とエネルギー貯蔵装置と推進用電動機とを備えたビークルが、リーン姿勢で旋回可能に構成された車両であること」を周知の技術(本件周知技術)と認定するが、ドローンが「エンジンと発電用電動機とエネルギー貯蔵装置と推進用電動機とを備えた」ものであることを認めるに足りる証拠を示していないし、本件容易想到性判断部分において、引用発明の車両をドローンとすることにつき格別の困難性は認められないと判断する根拠として、ドローンについて「リーン姿勢で旋回可能に構成された車両と同様に一般的に小型でエネルギー貯蔵装置も小型であること」を挙げるが、これを認めるに足りる証拠を示していない。
そうであるとすれば、引用発明の車両をドローンにすることに格別の困難性は認められないとする本件審決の判断は、その根拠を欠くものであり、判断の理由を示しておらず、誤りがあるというべきである。