識別力が否定された事例NO.11
拒絶査定不服審判で商標法第3条第1項第3号の識別力がないとして拒絶審決が出された不服審判請求事例2件を紹介します。相変わらず識別力の判断が厳しいです。
(1)「ヘアケアキャップ」の文字を標準文字で表してなり、第25類「洋服,ナイトキャップ,帽子,寝巻き類,下着,パジャマ,保温用サポーター,保温用フェイスマスク,冬用フェイスマスク」を指定商品とした事例
本願商標は、上記2のとおり、「ヘアケアキャップ」の文字を標準文字で表してなるところ、別掲1によれば、本願商標の構成中、「ヘアケア」の文字は「髪の手入れ。」の意味を有し、また、「キャップ」の文字は「縁なし帽子。」の意味を有する一般に親しまれた語である。さらに、別掲2によれば、指定商品の分野において、「ヘアケアをするためのキャップ」が「ヘアケアキャップ」「ヘアケア用キャップ」と称されて取引されている事例が多数あることに加え、別掲3によれば、「ヘアケアをするための商品」が「ヘアケア〇〇」と称され、「ヘアケアをするためのナイトキャップ」が取引されている事例も多数ある。そうすると、本願商標の構成各文字の意味及び上記商品の取引の実情に照らせば、本願商標は、その指定商品の分野の取引者、需要者に「ヘアケアをするためのキャップ」ほどの意味合いを容易に認識させるものであって、これを指定商品に使用するときは、これに接する需要者は、「ヘアケアをするためのキャップであること」、すなわち、商品の品質を表示したものと認識するにとどまるものというべきである。
(2)「AOMONO BLADE」の文字を標準文字で表してなり、第28類「釣り具,釣り用疑似餌,ルアー,釣り用ルアー,浮き(釣具),電子浮き(釣具),釣り用やな(わな),釣り用浮き,釣り用てぐす,釣り糸,リール,釣り用リール,釣りざお」を指定商品とした事例
本願商標は、上記2のとおり、「AOMONO BLADE」の文字を標準文字で表してなるところ、「青物」の語が「皮が青色の魚。イワシ・サバの類。」の意味(「広辞苑 第七版」岩波書店)を有するものであり、別掲1のとおり、本願の指定商品の分野において、「AOMONO」の文字が「青物」の欧文字表記として使用されている実情があることからすれば、その構成中「AOMONO」の文字は、指定商品との関係において、「皮が青色の魚。イワシ・サバの類。」を意味する「青物」の語の欧文字表記として理解されるものである。また、別掲2のとおり、本願の指定商品の分野においては、スピナー等についている光の乱反射により魚を誘うための金属製の釣り用具のことを「ブレード」と称している実情があり、別掲3のとおり、本願の指定商品の分野において、「BLADE(Blade)」の文字が「ブレード」の欧文字表記として使用されている実情が見受けられることから、本願商標の構成中の「BLADE」は、指定商品の取引者、需要者に、スピナー等についている光の乱反射により魚を誘うための金属製の釣り用具を意味する「ブレード」の欧文字表記として理解されるものである。
さらに、別掲4のとおり、本願の指定商品の分野において、「青物用のブレード」が取引されている実情が多数見受けられる。
以上に鑑みると、本願商標は、その指定商品の分野の取引者、需要者に「青物用のブレード」ほどの意味合いを容易に理解させるものであり、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に「青物用のブレードを用いた商品」であることを認識するにすぎないから、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものというのが相当である。