翻訳文提出前の出願請求
国際特許出願については、翻訳文提出後でなければ出願審査請求ができません(特許法第184条の17)。今回は出願審査請求をした後に翻訳文を提出して出願審査請求が却下された事例を紹介します(令和 6年 (行ウ) 5001号 処分取消請求事件)。
翻訳文提出前にした審査請求について特許庁が瑕疵を指摘しなかったとしても、特許庁の対応の不当が問題であって、法律上の瑕疵はないとして審査請求却下処分は取り消されませんでした。国際特許出願については、必ず翻訳文を提出してから審査請求するようにしましょう。
(要旨)特許法は、外国語特許出願についての出願審査の請求を行う前に、所定の翻訳文を特許庁長官に提出することをもって同出願審査の請求に係る手続要件とするものであり、この先後関係の瑕疵については 治癒を許さない性質のものであると解することができる。また、上記のような先後関係を要件とすることが特許法の規定上明らかであることに加え、実質的にも、外国語特許出願の出願人が、出願審査の請求をする前に、翻訳文を特許庁長官に提出することに特段の支障があることは考え難く、上記要件の充足を求めることが出願人に酷ということはできない。そうすると、外国語特許出願についての出願審査の請求を行う前に、同法 184条の4第1項の規定する翻訳文を特許庁長官に提出していない場合に は、同法184条の17所定の要件についての瑕疵が治癒される余地はなく、仮に出願審査の請求に係る手続を不適法として却下する処分が取り消されたとしても、同出願審査の請求に係る手続は不適法として却下を免れず、本件処分を取り消す実益はないといわざるを得ないから、処分を取り消すべき法律上の利益はないというべきである。