冒認出願

特許法第49条第1項第2号「第38条の規定により特許をすることができないものであるとき。」は共同出願違反として拒絶理由を有し、第7号「その特許出願人がその発明について特許を受ける権利を有していないとき。」は冒認出願として拒絶理由を有しています。真の発明者が特許出願に記載されていない場合、この共同出願違反と冒認出願違反とは一緒に争われることが多いです。

特許出願をする際、真の発明者を特定して願書に記載しなければならないところ、「本件発明の特徴的部分について発明者とは、当該発明における技術的思想の創作、とりわけ従前の技術的課題の解決手段に係る発明の特徴的部分の完成に現実に関与した者、すなわち当該発明の特徴的部分を当業者が実施することができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成する創作活動に関与した者を指すものと解されます」。

今回は、特許を受ける権利が争われ、共同出願違反・冒認出願違反に当たらないとした事件を紹介します(令和 5年 (行ケ) 10078号 審決取消請求事件)。

(要旨)本件試作機が備える前記の各機能のうち、可聴音の波形が 焦点位置で集束するような位相差で放射し、焦点位置で可聴音の波形を揃える機能(同(ウ))は、可聴音の音質を向上させるものではあっても、本件発明の技術的課題は、使用環境の制約の除去であって、可聴音の音質の向上ではないから、本件試作機の当該機能は本件発明の特徴的部分に当たるものではない。その余の点も、本件発明の特徴的部分を実施する場合に おける具体的・客観的な態様の一つにすぎず、その内容に応じ、本件発明 とは別の課題を解決したものということができることがあるとしても、本件発明の課題を解決したということはできない。すなわち、本件試作機の各機能は、本件実験機の開発によって、本件発明の特徴的部分は当業者が 実施することができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成され、本件発明が完成していたとの前記認定を左右するものではない。Cらは、本件発明の特徴的部分を当業者が実施すること ができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成した者ということはできず、本件発明の発明者(共同発明者)ではないと認められる。他方、本件発明に係る特許公報(甲1)には、Aらが発明者として記載 されているところ、前記認定及び弁論の全趣旨によれば、本件発明の発明者はAらであると認めることができ、これを覆すに足りる証拠はない。以上のとおり、本件特許には、原告の主張する冒認も、共同出願違反もないと認められるから、本件審決の判断に誤りがあるとは認められず、原告主張の取消事由は、いずれも理由がないことになる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です