均等侵害第1要件
前回は、均等侵害第5要件にて均等侵害が否定された事件を紹介しましたが、今回は、適用されることの多い、均等侵害第1要件にて均等侵害が否定された事件を紹介します(令和7年(ネ)第10005号 特許権侵害排除等請求兼損害賠償等反訴請求控訴事件)。
(要旨)本件発明は、従来技術(【0002】、図4)において、フランジ幅の狭い梁101のフランジ101aに親綱支柱110の取付部ボルト110aを奥まで挿入できる厚板プレート102を挟締金具103で固定し、フランジ幅の狭い梁101と厚板プレート102とを一体化して親綱支柱110を設置していたフランジ幅の狭い形鋼の梁に親綱支柱を設置する場合に、挟締金具での厚板プレートの固定に手間がかかるという問題があったため、フランジ幅の狭い形鋼の梁に親綱支柱を設置するのに手間がかからない、親綱支柱取付治具を提供することを課題とし(【0006】、【0007】)、解決手段として、第1の方向に伸びる矩形状の板(構成要件B。【0002】、図4の従来技術における厚板102に相当)の第1の方向端部より逆方向の端部までの長さが、治具が取付けられる形鋼のフランジの幅より長い(構成要件E)ものとし、また、この矩形状の板の第1の方向の端部で上下方向に間隔を開けてU字状に折り曲げられた折り曲げ部(構成要件C、【0008】)を採用して従来の挟締金具103に代わるものとし、もって、U字状の折り曲げ部を幅の狭いフランジ部に係合した状態で、親綱支柱の取付具
を位置決めして固定でき、フランジ幅の狭い形鋼の梁に親綱支柱を設置するのに手間がかからない、親綱支柱取付治具を提供できるという効果を奏するものである(【0013】、【0014】)。
本件発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分は、上記課題を解決するために、第1の方向に伸びる矩形状の第1の方向端部より逆方向の端部までの長さを治具が取付けられる形鋼のフランジの幅より長いものとし(構成要件E)、かつ、同矩形状の板が第1の方向の端部で上下方向に間隔を開けてU字状に折り曲げられた折り曲げ部を備える(構成要件C)ことにあると認められるから、構成要件C及びEは、課題解決のための技術的思想の特徴的な部分を構成する。被告製品が本件発明の構成要件C及びEを充足しないことは前記1、2のとおりであるから、本件明細書に記載のない乙17発明について検討するまでもなく、被告製品は均等の第1要件を充足しないものというべきである。