部屋の消臭方法
「故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法」とする特許権(特許第6889954号)を侵害するか否かが争われた事件を紹介します(令和7年(ネ)第10008号 特許権侵害差止等請求控訴事件)。方法特許ではその使用行為(特許法2条3項2号)が侵害を構成しますが、使用の立証は時間の経過とともに難しくなります。
(要旨)被控訴人が、本件清掃作業の中で、洋間の敷居滑りを撤去した箇所やトイレにおいて、当該箇所を塗料で覆う被覆作業をしたとしても、この作業が『前記解体作業で露出した汚物の残存する箇所を塗料で覆う被覆作業』(構成要件E)に該当するとは認められない。
見積り段階からコーティング処理が作業項目に計上されていたとしても、清掃作業においてコーティング作業が必要となると被控訴人が予測していたことを示すものにすぎず、本件物件内の洋間の敷居滑りやトイレにおいて、解体作業によって露出した箇所に汚物が残存していることを、被控訴人が作業前に予測していたと推認することはできず、上記箇所において解体作業によって露出した箇所に汚物が残存していたと認定することもできない。また、被控訴人が、本件清掃作業において、オキシライトPROという商品名の過酸化水素水を清掃作業において使用したことは認められるが(甲13、24)、故人の放置された部屋の特殊清掃作業にオキシライトPROを用いるとしても、解体作業によって露出した箇所に汚物が残存していた場合にのみこれが用いられるとは認められず、かつ、被控訴人が、本件清掃作業において、表層部分の解体作業によって露出した箇所に汚物が残存していた箇所を選択してこれらの作業を実施したとも認められないから、被控訴人が本件清掃作業においてオキシライトPROを用いた作業を実施したことをもって、解体作業によって露出した箇所に汚物が残存していたと推認することはできない。