クレームにおける「又は」の記載
特許請求の範囲に「又は」と記載して、少なくともいずれか一方の判断が行われた場合と記載した場合、両方の判断ができる機構を備える必要があるのか否かが争われた事件を紹介します(令和6年(ネ)第10084号 損害賠償請求控訴事件)。ケースバイケースですが、発明の特徴的部分である場合には、両方の判断ができる機構を備えることが必要と判断された事例です。
(要旨)構成要件J『前記第1送受信アンテナにより一定時間以上前記遠隔操縦装置からの信号を受信しなかったと判断された場合、または、前記電源の残量が半分以下になったと判断された場合のうち、少なくともいずれか一方の判断が行なわれた場合に、前記初期位置に自動回帰させるため、前記現在位置および前記初期位置に基づいて、前記推進動力源と前記操舵装置との動作を制御する第1制御装置と、』は、その全体が、本件発明に係る遠隔操縦無人ボートが有する『第1制御装置』を説明するものであり、一艘の遠隔操縦無人ボートが備える『第1制御装置』につき、第1送受信アンテナにより一定時間以上前記遠隔操縦装置からの信号を受信しなかったと判断された場合(自動回帰発動条件①に係る判断) 及び電源の残量が半分以下になったと判断された場合(同②に係る判断)があることを前提として、それらの各判断の関係がどのようになった場合に初期位置に自動回帰させるための動作が制御されるのかについて、『少なくともいずれか一方の判断が行われた場合』に初期位置に自動回帰させるための動作が制御されることを述べたものと解されるものあって、本件発明の構成要件Jの『第1制御装置』は、自動回帰発動条件①及び②のいずれに係る判断をも行うことができる機構を備えるものであることが明らかである。
本件発明において従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分は、本件発明の構成要件Jに関連しては、遠隔操縦装置との通信途絶、電源残量の不足という相互に原因の異なる危機的状況への対処(【0005】)のため、自動回帰発動条件①の場合に初期位置に自動回帰させること及び同②の場合に初期位置に自動回帰させることをそれぞれ想定して、ボートを紛失することなく必ず回収できる(【0007】)との作用効果を奏するため、いずれの危機的状況にも対処できるよう、第1制御装置が自動回帰発動条件①に係る判断と同②に係る判断のいずれをも行える機構を備えたことにあると考えられる。