商標法上の公序良俗違反

商標法4条1項7号には、公序良俗違反という拒絶理由があります。この公序良俗違反としてどこまで適用されるか難しいところです。今回は、詩的紛争の範囲内であれば公序良俗違反に該当しないと判断された事例を紹介します(令和7年(行ケ)第10006号 審決取消請求事件)。

(要旨)商標法4条1項7号については、公序良俗に反する商標の登録を阻止するためのものであり、典型的には、商標を構成する標章自体が公序良俗に反する場合に、登録商標による保護を与えないことを趣旨とするものである。商標登録につき先願主義(同法8条1項)を採用する我が国の法制度の下では、私的紛争の範囲内において、一方の利害関係人が先に出願し登録を得たとしても、当然には同法4条1項7号には該当しないものと解される。

本件商標の構成自体には公序良俗に反する要素は認められない。(2)の事実経過によれば、本件出願時に原告が本件団体の会長の、被告が関西支部長の地位にあったことは客観的事実であり、本件の実体は、原告と被告の間の本件団体の在り方を巡る見解の対立等から派生した問題とみられ、原告自ら速やかに商標登録出願を行うことを妨げるべき事実も認められない。本件団体の会員数が近時100人前後であることに鑑みれば、本件商標の出願・登録が、当事者間の私的領域の問題を超えて公序良俗に関わることになるとはいえず、本件商標が商標法4条1項7号に該当するとは認められない。

原告は、本件団体は趣味の会であるから本件商標は「標章」ではあるが商標ではなく、原告が商標登録出願をする機会があったとする本件審決の判断は誤りである旨主張する。商標法2条1項各号によれば、「商標」は、「標章」のうち、業として商品を生産、譲渡等し、又は業として役務を提供等する者が商品ないし役務について使用するものである。しかし、「業として」というためには営利を目的とする必要はなく、同号記載の各行為が反復継続してされれば足りるものであるところ、本件団体は、近時はミニカーに「JMAC」の文字やロゴを入れたものを支部単位で年2回まで会員に配布し、本件団体の中央でも50周年モデル、60周年モデルとしてこのようなミニカーを各支部に配布するなどしており(甲20、21、53等)、上記(2)ウで原告が被告に指摘したのも、このミニカーの配布の頻度や価格に関するものであると解される。したがって、本件団体において使用されていた本件商標が「商標」に該当しないとはいえない。

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