商標類否判断事例NO.16

下記の文字商標で、第9類「携帯電話機用ストラップ」等を指定商品とした本願商標が、無効不成立審決がなされ、審決取消訴訟で、引用商標3と類似すると判断されて無効となった事例を紹介します(令和5年(行ケ)第10068号 審決取消請求事件)。原告標章が原告らのロゴマークとして取引者、需要者の間に広く認識されていることなどを併せ考慮して類似と判断されました。

(要旨)(ア) 外観
別紙登録商標目録記載のとおり、本件商標のO!Oi部分は、「O」、「!」、「O」及び「i」の各文字又は符号を同じ書体(やや斜字のゴシック体様の黒の書体)、同じ大きさ及び等しい間隔で一連に横書きしてなるものであり、これらの文字又は符号は、まとまりよく一体的に構成されている。別紙引用商標目録記載3のとおり、引用商標3は、「〇」、「|」、「〇」及び「|」の各記号を同じ書体(ゴシック体様の赤の書体)、同じ大きさ及び等しい間隔で一連に横書きしてなるものであり、これらの記号は、まとまりよく一体的に構成されている。ここで、引用商標3の「|」の記号は、「I」の文字を図案化したものとして、両者は実質的には変わりのないものとの印象を与え得るものであり、また、「I」の文字と「i」の文字は、互いにアルファベットの大文字・小文字の関係にあるにすぎないから、これらも、実質的には変わりのないものと理解され得るといえる。さらに、証拠(甲65~77)及び弁論の全趣旨によると、企業名、ブランド名、サービス名、芸名等を表すロゴや文字列の中で、「I」文字又は「i」の文字に代えて「!」の符号又は縦若しくは斜めの棒状の図形の下部に「●」、「■」、「★」等の図形を配した記号を用いる例が多数あるものと認められ、「!」の符号も、アルファベットの文字列の中に配されたときは、「I」の文字又は「i」の文字と変わりのない文字であると理解され得るものである。加えて、「〇」の記号も、「O」の文字を図案化したものとして、両者は実質的には変わりのないものとの印象を与え得ること、前記説示したところを踏まえると、その取引者、需要者からみれば、本件商標のO!Oi部分と引用商標3の字体の相違(色彩の相違を含む。)が類否判断に当たって大きな意味合いを有するものとは認め難いことを併せ考慮すると、取引者、需要者は、本件商標のO!Oi部分を見た場合、これが「〇|〇|」と実質的には変わりのないものを指すと理解し得るということができるから、本件商標のO!Oi部分の構成と引用商標3の構成との間に厳密には前記のような相違があるとしても、隔離観察を前提とすると、両者は、外観上極めて相紛らわしいものであると認めるのが相当である。

(イ) 称呼
本件商標のO!Oi部分は、途中に感嘆符を含む一種の造語であるが、証拠(甲37~41、45、52~54、56、58)及び弁論の全趣旨によると、O!Oi部分からは、「オーアイオーアイ」又は「オアイオアイ」の称呼が生じるものと一応認められる。別紙引用商標目録記載3及び別紙ハウスマーク目録記載のとおり、引用商標3は、原告標章と外観上同一視し得る形状のものであるところ、前記1のとおり、原告標章が原告らのロゴマークとして取引者、需要者の間に広く認識されているものであることからすると、引用商標3からは、「マルイ」の称呼が生ずるものと認めるのが相当である(この点は、当事者間に争いがない。)。そして、本件商標のO!Oi部分と引用商標3とが、前記のとおり、外観上極めて相紛らわしいことを踏まえると、O!Oi部分についても「マルイ」の称呼が生じ得るというべきである。
(ウ) 観念
本件商標のO!Oi部分は、特定の意味合いを有しない一種の造語である。別紙引用商標目録記載3及び別紙ハウスマーク目録記載のとおり、引用商標3は、原告標章と外観上同一視し得る形状のものであるところ、前記1のとおり、原告標章が原告らのロゴマークとして取引者、需要者の間に広く認識されているものであることからすると、引用商標3からは、「丸井又はマルイのロゴマーク」などの観念が生ずるものと認めるのが相当である(この点は、当事者間に争いがない。)。そうすると、本件商標のO!Oi部分が特定の意味合いを有しないとしても、同部分は引用商標3と外観上極めて相紛らわしいから、同部分からは、引用商標3と同様の観念が生じ得るものということができる。
(エ) 検討
以上のとおり、本件商標のO!Oi部分と引用商標3は、外観、称呼及び観念の点で極めて相紛らわしいものであり、加えて、前記1のとおり、引用商標3と外観上同一視し得る形状を有する原告標章が原告らのロゴマークとして取引者、需要者の間に広く認識されていることなどを併せ考慮すると、本件商標のO!Oi部分と引用商標3については、両者が同一の商品又は役務について使用された場合、その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるものと認めるのが相当である。したがって、本件商標のO!Oi部分と引用商標3は、取引の実情に基づき、外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、互いに類似するものと認められる。

原告商標
引用商標3

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