発信者情報開示請求権
「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」は、インターネット上での情報流通において、特定の役務提供者がどのように責任を負うかを明確にし、権利侵害が発生した場合の発信者情報の開示手続きを定めています。この法律によると、特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、特定電気通信役務提供者に対し、権利の侵害に係る発信者情報の開示を請求することができます。
今回は、UNCHOKE 通信が特定発信者情報に関して法律の規定に該当しないとして、公衆送信権(送信可能化権)侵害をもたらす通信に対して発信者情報の開示が認められなかった事例を紹介します(令和 5 年(ワ)第 70007 号 発信者情報開示請求事件)。発信者情報開示請求をする際、情報を拡散した通信媒体が特定電気通信に該当するかを検討しておくことが重要です。
(要旨)本件調査における UNCHOKE 通信は、本件動画に係るファイル提供者リストに記録されたユーザーに接続した本件検出システムに対し、当該ユーザーからのファイル(ピース)のダウンロード(アップロード)が可能であることを通知するものに過ぎず、ファイル(ピース)のダウンロード(アップロード)を伴わない。このため、仮に、本件発信者が、本件動画に係るファイルのダウンロードすなわち「情報を記録」することにより(著作権法 2 条 1 項 9 号の 5 イ) 又は、 当該ファイルの情報が記録された端末を公衆の用に供されている電気通信回線に「接続」することにより(同号ロ)、送信可能化を完了していたとしても、UNCHOKE 通信それ自体は、原告の本件動画に係る公衆送信権(送信可能化権)侵害をもたらす通信ではない。そうである以上、UNCHOKE 通信に係る本件発信者情報は、「特定発信者情報以外の発信者情報」ではなく、また、「特定発信者情報」にも当たらない。