ダンパ

特許侵害訴訟は、一審が地裁で二審が高裁で争う構図となります。今回は、東京地裁判決が覆り、被告Σ形ダンパ5及び6が組み込まれた被告製品は本件各訂正発明の技術的範囲に属すると判決された知財高裁事例を紹介します(令和6年(ネ)第10034号 特許権侵害損害賠償請求控訴事件)。剪断部の入力の方向について明細書等の記載から限定的に解釈されないとして、侵害が認められました。このように、特許明細書は、技術的特徴部分を除いて、一般的な説明で留めておいた方が強い権利となります。

(要旨)本件訂正後の特許請求の範囲及び本件訂正明細書の記載によると、本件訂正発明1は、従来の剪断パネル型ダンパが、
「剪断部を一つしか有しておらず、所定レベル以上の地震に対して、一方向からの水平力に対してしかダンパとして機能しな
い」【0004】という課題に着目し、「所定レベル以上の地震の際に、複数の方向からの入力に対してダンパとして機能し得る弾塑性履歴型ダンパを提供することを目的と」して(【0006】) 「板状の一対の剪断部」を「互いの向きを異ならせ
て設け」た構成としたものであり(【0007】 ) 「剪断部」に対する「入力」の方向については何ら限定していない。そうすると、本件訂正発明1は、従来と同様の構成の「剪断部」を「互いの向きを異ならせて設け」た「一対の剪断部」という構
成により、複数の方向からの入力に対応しようとするものであり、各「剪断部」自体が新規な構成を有するものではない。そして、構成要件Gの「前記剪断部」が指し示すものは、「一対の剪断部」(構成要件C’)を構成する各「剪断部」であるから、構成要件Gの「入力により荷重を受けたときに、変形してエネルギー吸収を行う」のは、各「剪断部」が有する特徴であって、これは、剪断部が有する一般的な機能が記載されているにすぎないと解される。そうすると、構成要件Gの「入力」は、「剪断部」に対して外部から与えられる荷重であれば足り、特定の方向に限定されるものではないと解するのが相当である。前提事実(6)及び(7)によると、被告ダンパが備える各ウェブ部は、「入力により荷重を受けたときに、変形してエネルギー吸収を行う」ものであると認められるから、被告ダンパは構成要件Gを充足する

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