車両誘導システム
今回は、高速道路のETCレーンで誤って入った車両を一般車用出入口に誘導する特許についての侵害訴訟事件を紹介します(令和7年(ネ)第10035号 債務不存在確認請求、損害賠償請求反訴控訴事件)。高速道路で誤ってETCレーンに入った車両を一般車用出入口に誘導しているかどうかが争点となりましたが、誘導標識もないことから誘導手段に該当しないと判断されました。
(要旨)ETCによる料金徴収が不可能であったためにスマートインターチェンジを利用できなかった車両は、レーンEを走行した後、種々の経路を走行して、当該スマートインターチェンジの近隣にある別のインターチェンジの一般車用出入口を利用することがあり得る。しかし、それは、ETCによる料金徴収が可能な車両しか通行できないスマートインターチェンジの性質上、ETCによる料金徴収が不可能な車両は近隣の一般車用出入口を利用せざるを得ないという当然のことであって、その車両の走行挙動を、【図11】の実施例に係る誘導手段による誘導の結果とみることは困難である。そうすると、本件親出願明細書の記載からは、ETCによる料金徴収が不可能であったためにスマートインターチェンジを利用できなかった車両が、隣接する別のインターチェンジの一般車用出入口を利用することが、本件発明2に係る誘導手段による誘導の結果であることを読み取ることはできない。…「誘導」とは、目的に向かっていざない導くことを意味するところ、原告各設備内にはUターンを指示する標識等は存在しないのであるから、原告各設備が、ETCによる料金徴収が不可能な車両を再度ETC車専用出入口手前へ戻るルートにいざない導いているということはできない。当該車両の運転者が、その選択によりUターンをして再度ETC車専用出入口手前へ戻ることが事実上可能であるとしても、そのような運転者の意思による車両の走行を、原告各設備に設置された誘導手段によるものと評価することには無理があるというほかない。したがって、原告各設備は、いずれも、ETCによる料金徴収が不可能な車両を「再度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート」に誘導する誘導手段を備えているとはいえないから、構成要件2Eを充足しない。控訴人の主張は採用することができない。