設計事項

特許拒絶理由通知において、「相違点は設計事項である」という文言を見かけますが、どのように設計事項であるかの根拠を示す必要があることを示す無効審決取消判決を紹介します(令和5年(行ケ)第10020号 審決取消請求事件(第1事件)、令和5年(行ケ)第10021号 審決取消請求事件(第2事件))。拒絶理由応答の際の参考になります。

(要旨) 被告は、「杭の断面力(曲げモーメントを含む概念である。)は深さ方向に変化するため、深さや発生断面力に応じ杭の材質・鋼種を変更することがある」との周知技術が認定でき(技術①、③参照)、これは典型的には降伏強度の異なる鋼管杭を用いることである上、「強度の観点のみならず経済性の観点から鋼管杭の板厚及び鋼種をその設置位置や部位ごとに変更すること」「杭全体のうち、大きい曲げモーメントがかかる部分についてだけ高降伏強度の鋼管杭を用いること」 「杭に生じる曲げモーメントが大きい箇所において全塑性モーメントに達しないように設計することが望ましいこと」がいずれも技術常識であり、鋼管杭の設計に際しどのくらいの降伏強度の鋼管杭とするかは周知技術に基づき適宜設計されるものだから、相違点3A又は3Bに係る構成は、周知技術又は技術常識から導出し得る旨主張する。しかし、本件審決が説示するとおり、被告は、「強度の観点のみならず経済性の観点から鋼管杭の板厚及び鋼種をその設置位置や部位ごとに変更すること」や「杭全体のうち、大きい曲げモーメントがかかる部分についてだけ高降伏強度の鋼管杭を用いること」が技術常識であることをいかなる証拠の記載から認定できるかを具体的に指摘していない上、仮に、これらが技術常識であるとしても、これらを組み合わせる動機付けや、組み合わせた結果からどのようにして相違点3A又は3Bに係る構成が導出されるかにつき、技術的視点に基づいた具体的な主張をしていない。そして、前記のとおり、周知技術及び公知技術(技術①~⑥)によっても、甲1発明の「鋼管杭」又は甲13発明の「鋼管杭」を、相違点3A又は3Bに係る構成にすることは導出できず、そのような構成を得ることが、当業者が通常行うべき試行錯誤の範囲内ということもできない

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