送信可能化権

音楽ファイルの複製物にあたる音楽CDをビットトレントネットワークで流通させる行為をした者の情報の開示請求事件を紹介します(令和5年(ワ)第70486号 発信者情報開示請求事件)。複製した音楽CDを流通させる行為は、例えピア間通信であっても著作権(送信可能化権)侵害に当たりますので、ご注意ください。

(要旨)被告は、本件調査の過程でダウンロードしたのがファイルの一部のピースにすぎない場合には、送信可能化されたのが当該レコードで固定化された音のうち、創作的部分であるか分からないなどと主張して原告らの請求を争うが、レコードに固定された音が送信可能化されることによってレコード製作者の送信可能化権が侵害されるから、被告の主張は理由がない。

被告が本件ピア1、2に係る契約者の氏名又は名称及び住所を保有していることは争いがないものの、被告が保有しているこれらの情報が必ずしも当該契約者に係る現在の正確な情報であるとは限らないことからすると、原告らには、当該契約者に係る電話番号及び電子メールアドレスの開示を受ける正当な理由があると認められる。

被告は、ビットトレントネットワークにおいてピア間で行われる通信は1対1の特定者間の通信であるから、プロバイダ責任制限法所定の特定電気通信に当たらないなどと主張するが、ピア間の通信は最終的には1対1で行われるものの、ビットトレントネットワーク自体には不特定の者が参加することができ、各ピアは当該不特定の者とデータの送受信をすることからすると、本件通信はプロバイダ責任制限法所定の特定電気通信であり、被告の主張には理由がない。

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