商標類否判断事例NO.20
ロゴ商標で第43類「鳥から揚げを主とする飲食物の提供」その他を指定役務とした本件商標は、引用商標と類似であるとして拒絶審決され、審決取消訴訟でも類似と判断された事例を紹介します(令和5年(行ケ)第10060号 審決取消請求事件)。ロゴ商標であっても結合商標であるとして文字部分が要部であると認定され、文字部分を抜き出して類似と判断されています。
(要旨)本願商標の図形部分は、一見して何を表すものであるか看取することは困難であり、直ちに特定の観念及び称呼が生じると認めることはできない。他方、本願商標の文字部分は、当該文字は辞書等に掲載のないものであって、特定の意味合いを認識させることのない一種の造語として認識されるものであって、特定の観念を生じさせず、ローマ字読みした場合、「ポッポ」の称呼を生じるものといえる。以上を総合すると、本願商標は、図形部分と「POPPO」の文字部分とからなる結合商標であるところ、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められないから、その構成部分の一部であり、 ポッポの称呼を生じる文字部分である「POPPO」の部分を抽出し、当該部分(以下「本願要部」という。)だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
本願要部(「POPPO」の文字部分)と引用商標1とを比較すると、外観においては、両者は、文字の種類が欧文字と片仮名とで異なり、色彩が相違するものであるが、商標の使用においては、商標の構成文字を同一の称呼を生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記したり、文字の色を変更したりすることがあることに鑑みれば、これらの外観上の差異が、看者に対し、強い印象を与えるとまではいえない。また、称呼においては、文字部分と引用商標1は、「ポッポ」の称呼を共通にするものである。さらに、観念においては、文字部分と引用商標1は、共に特定の
観念を生じるものではない。そうすると、本願要部と引用商標1は、外観において相違し、特定の観念を生じないものであるものの、称呼を共通にし、外観の相違は称呼の共通性による印象を凌駕するほどの顕著なものとは認められない。
本願要部と引用商標2を比較すると、外観においては、それぞれの構成文字の書体及び色彩、各文字の形状に沿って配される白抜きの円図形の有無、語尾の「O」の文字の中心における星形図形の有無において差異はあるものの、文字のつづりを5 共通にするものであるから、両者は外観において似通った印象を与えるものであり、称呼においては、共に「ポッポ」の称呼を生じるから、両者は、称呼上、同一である。また、観念においては、共に特定の観念を生じるものとはいえない。そうすると、本願要部と引用商標2は、特定の観念を生じないものであるものの、外観上似通った印象を与えるものであって、称呼を同一とするものである。
本願商標の指定役務は第43類「鳥から揚げを主とする飲食物の提供」を含むものであり、引用商標1の指定役務は第42類「らーめん・お好み焼・たい焼・フライドポテト・アイスクリーム及び清涼飲料を主とする飲食物の提供」であり、引用商標2の指定役務は第43類「飲食物の提供」である。しかるところ、これらを提供する者はいずれも飲食サービス業者であって業種が一致する。また、飲食サービス業者においては、同一店舗において、ラーメンと空揚げとフライドポテト、お好み焼きと空揚げなどを提供することも行われており(乙34~39)、さらに、提供する飲食物が相違する様々な店舗を同一経営者が飲食店グループとして運営することも一般的に行われているところである。以上によると、本願商標と各引用商標は、それぞれの指定役務において使用された場合、営業主体、すなわち役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるというべきであって、互いに類似するものであり、また、本願商標と各引用商標は、「飲食物の提供」の役務との点で共通するから、指定役務が類似するといえる。



