誤認惹起行為
不正競争防止法2条1項20号(誤認惹起行為)では、「商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の 原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし 、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為」を不正行為と定めています。今回は、誤認惹起行為が認められ、1億円程度の損害賠償金が発生した事件を紹介します(令和4年(ワ)第2551号 損害賠償請求事件)。過去の販売実績を現在も継続しているようなホームページ上の記載について厳に慎むべきです。
(要旨)不正競争防止法2条1項20号の誤認惹起行為が不正競争に該当し違法とされるのは、事業者が商品等の品質、内容などを偽り、又は誤認を与えるような表示を行って、需要者の需要を不当に喚起した場合、このような事業者は適正な表示を行う事業者より競争上優位に立つことになる一方、適正な表示を行う事業者は顧客を奪われ、公正な競争秩序を阻害することになるからである。このような趣旨に照らすと、「品質」について「誤認させるような表示」に該当するか否かを判断するに当たっては、需要者を基準として、商品の品質についての誤認を生ぜしめることにより、商品を購入するか否かの合理的な判断を誤らせる可能性の有無を検討するのが相当である。
令和元年5月8日から令和3年8月30日までの表示について前提事実(5)ア④の「全国導入実績2,500台以上」との表示は、被告が販売している業務用生ごみ処理機、すなわち被告商品は、全国で2500台以上が販売されているとの事実を、「ゴミサー/ゴミサポーターはその処理方法・性能が多くの企業・施設で認められ、おかげ様で現在、全国で2,300台以上が稼働しています。」との表示は、被告商品は、その処理方法及び性能が多くの企業や施設で認められたため、全国で2300台以上が販売されたとの事実を、「全国・海外での導入実績は3,500台以上。」との表示は、被告商品は、全国及び海外で3500台以上が販売されたとの事実を需要者に対し認識させるものであると認められる。他方で、前提事実(5)エによれば、被告が令和元年5月8日以降販売している被告商品の過去の累計販売数は2300台に達するものではないことが認められ、少なくとも、上記「全国導入実績2,500台以上」 「ゴミサー/ゴミサポーターはその処理方法・性能が多くの企業・施設で認められ、おかげ様で現在、全国で2,300台以上が稼働しています。」及び「全国・海外での導入実績は3,500台以上。」の表示(以下、これらを併せて「本件誤認惹起表示①」とい。)は、いずれも、実際の販売実績とは異なるにもかかわらず、多数の被告商品が販売されており、このような販売実績は、被告商品のごみ処理方法及びその性能が他の同種商品に比べて優れたものであることに起因することを強調するものであって、その結果、需要者に対し、被告商品がその品質において優れた商品であるとの権威付けがされ、また、他の需要者も購入しているという安心感を与えることになるため、需要者が商品を購入するか否かの合理的な判断を誤らせる可能性があるというべきである。そうすると、本件誤認惹起表示①は、「品質」について「誤認させるような表示」に該当すると認められる。

