ランプ

特許請求の範囲に機能的記載が含まれている場合、明細書の実施例を参酌して権利範囲が画定されます。今回は、「LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置されている」という機能的記載が含まれるランプの発明に関する侵害訴訟事件を紹介します(令和6年(ワ)第70139号 特許権侵害差止等請求事件)。明細書に限定解釈されない記載が含まれていることから、筐体からの放熱構造について、放熱部が筐体に熱的に接続されていれば良いと広く解釈されました。

(要旨)本件発明1-1に係る特許請求の範囲には、「熱移送手段」について、「(筐体内において筐体と離れて配置された)前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置されている」(構成要件1J及び1K)ことが記載され、「熱移送手段」が、LEDモジュールの熱を移送する機能を有することを理解することができるが、その具体的な構成を特定する記載はない。そこで、本件明細書の記載を考慮するに、本件明細書には、発明を実施するための形態として、例えば、熱移送手段が熱伝導部と放熱部とを有し、熱伝導部はLEDモジュールの熱が伝導されるように配置され、放熱部は筐体にLEDモジュールの熱を放熱できるように配置されていること(【0010】)、例えば、放熱部が、熱移送手段の一端に形成され、熱移送手段の他端はLEDモジュールと熱的に接続され、放熱部が筐体と熱的に接続されていること(【0011】、【0012】)が、また、実施形態1として、熱移送手段は、公知の熱移送手段を用いることができ、例えば、公知の熱伝導素材で形成された部材(熱伝導部材)、ヒートパイプ、これらの組合せ等が挙げられ、熱移送手段はLEDモジュールの熱を筐体に放熱できるように配置されていればよいこと(【0024】、【0025】)、熱移送手段が熱伝導部と放熱部を有する構成としてもよく、熱伝導部と放熱部を、熱的に接続され、一体的に形成された別部材とすることや、熱移送手段における熱伝導部と放熱部の位置に制限がないこと(【0031】、【0032】)が記載されている。以上によれば、「熱移送手段」は、公知の熱伝導素材で形成された部材(熱伝導部材)のみならず、複数の熱伝導部材が一体的に形成されたものでもよく、「熱移送手段は、前記LEDモジュールの熱を前記筐体に放熱できるように配置されている」とは、このような熱移送手段がLEDモジュール及び筐体と熱的に接続されていることにより、LEDモジュールの熱を筐体に放熱できるように配置されていることを意味するものと解される。

被告製品の放熱板及びヒートスプレッダは熱伝導素材で形成された部材であり、接着剤で接着されているから(弁論の全趣旨)、放熱板及びヒートスプレッダは、熱伝導部材が一体的に形成されたものといえる。そして、放熱板の表面の一部はCOB型LEDモジュールと接触し、放熱板の裏面の中央部はヒートスプレッダと接触し、放熱板の裏面の端部が筐体と接触するように配置され、ヒートスプレッダは、放熱板と接触する面と反対側の面が筐体と接するように配置されている(構成l及びm)。そうすると、放熱板は、その表面の一部がCOB型LEDモジュールと接触し、裏面の中央部はヒートスプレッダを介して筐体に接し、裏面の端部は筐体と接しているから、一体的に形成された放熱板及びヒートスプレッダは、筐体と熱的に接続されているといえる。

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