類否判断を考えてみましょうNO.25
「カッター付グラップルバケット」について、本願意匠と引用意匠は似ていると思いますか?答えは似ている(類似)と判決されました(令和7年(行ケ)第10029号 審決取消請求事件)。非類似と判断される事例が多い中で、類似と判断された希少な事例です。
(要旨)(イ) 共通点
a 正面正面視において、バケット縁部の側壁の下端に表れる形状線を、左端(先端)から右に向かってやや上向きの略「つ」の字状に湾曲したあと、反転して右端(後端)まで小さく凸弧状に湾曲したものとしている点
共通点aは、正面視においてバケット縁部の下端に表れる形状線であるところ、左端から右に向かってやや上向きの略「つ」の字状に湾曲したあと、反転して右端まで小さく凸弧状に湾曲した態様における共通性は、両部分の基本的な構成にかかわるものであり、需要者の視覚を通じた美感に与える影響も大きいものとみられるから、共通点aが、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
原告は、前記第3〔原告の主張〕1ないし3のとおり、本願部分は、バケットの縁部を少し抉るようにしてカッターとバケットの縁部の間の空間を広げることによって、より太い立木を切断、伐採することができるようになったものであり、両部分の全体的な美感は共通しない旨主張する。しかし、本願部分は、より太い木材の伐出作業を行うため、「カッターとバケットの縁部の間の空間を広げる」工夫がなされたものであったとしても、それが意匠創作上の新規な特徴として需要者の注意を強く引くものでない限り、意匠上の差異として評価することはできず、前記1⑵オのとおり、両部分の正面視に係るバケット縁部の側壁の下端の形状線全体も、左端から上向きに湾曲し反転して右端まで凸弧状に湾曲する全体の態様は共通しており、原告の主張する三つの線成分(A、B、C)ないし曲線部分(A´、B´、C´)も、一連の曲線形状において特段それぞれ異なる部分として認識できるようなものではなく、両部分の差異についても直ちには認識し難いものといえる。そうすると、本願部分の態様は、引用部分との対比において、底面視を含めた意匠全体を観察した場合に、需要者に異なる美感を起こさせるまでには至らないものということができる。したがって、原告の上記主張は採用することができない。




