特許用語「圧着」
特許明細書では「圧着」という用語が用いられることがあります。この「圧着」は、加圧を利用してさまざまな材料を接合する手法であり、「圧迫」と「接着」の造語であると思われます。今回は、圧着の用語が不明確であることを争点の一つとした侵害訴訟事件を紹介します(令和7年(ネ)第10045号 特許権侵害差止請求控訴事件(原審 東京地方裁判所 令和5年(ワ)第70594号))。クッション体の構成から明細書に定量的な記載がなくても明確であると判断されています。
(要旨)控訴人は、「圧着」は「強く圧迫してくっつけること」と解すべきであるところ、「強く」に該当するか否かを判断するための基準や程度が第三者にとって不明であるから、本件発明の特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である旨主張する(前記第3の7)。しかし、既に繰り返し述べたとおり、本件発明の構成要件G、Hにおける「圧着」とは、クッション体同士が隙間なく密着する程度に、相互に圧力がかかっている状態であることをいうものと解するのが相当である。そして、上記クッション体相互にかかる圧力については、数値等の定量的な基準がなくとも、本件明細書の記載を通じ、マットレスカバー及びクッション体の構成等から、当業者が容易に理解できるものと認められる。そのため、本件発明の特許請求の範囲の記載は明確である。

