本質的部分の認定
特許均等侵害第1要件は、「特許請求の範囲に記載された構成中に相手方が製造等をする製品又は用いる方法と異なる部分が存する場合であっても、⑴同部分が特許発明の本質的部分ではないことが必要となります。今回は、均等第一要件の充足性を認定するにあたり、明細書の従来技術ではなく、審査過程で挙げられた引用文献を基に特徴的部分が認定された事例を紹介します(令和6年(ワ)第70460号 特許権侵害損害賠償等請求事件)。
ただし、明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載されているところが、出願時の従来技術に照らして客観的に見て不十分な場合には、明細書に記載されていない従来技術も参酌して、当該特許発明の従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が認定されるべきである(知財高裁平成27年(ネ)第10014号同28年3月25日特別部判決参照)
(要旨)上記の出願経過に鑑みれば、本件明細書に記載された従来技術(特許文献1)は、出願時の従来技術に照らして客観的に見て不十分であったといえるから、本件発明1の本質的部分(従来技術に見られない特有の技術思想を構成する特徴的部分)を認定するに当たっては、出願時の拒絶理由の根拠として引用された本件拒絶引用文献(甲5)が開示する従来技術も参酌するのが相当である。…本件発明1は、本件拒絶引用文献の記載を踏まえ、セグメントにアーチ形支保工のセグメントとの接合箇所となる接合用凹部に「仮補填ケース」が「着脱自在に取り付け」られ、かつ、「仮補填ケース中に充填材を充填する」構成を追加したものであるのに対し、拒絶引例においては、仮補填部材が、切削可能な充填材料を充填したものであって、「仮補填ケース中に充填材を充填した」ものではなく、「着脱自在に取り付けた」ものでもない点で相違する。そうすると、本件発明1において従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分は、追加された上記構成であるといえるから、本件発明1の本質的部分は、①「仮補填ケースを着脱自在に取り付けた」(構成要件1A)、②「前記仮補填ケース中に充填材を充填する」(構成要件1B)という、一連一体の構成にあるものと認めるのが相当である。これを本件対象製品についてみると、前記2及び3のとおり、本件対象製品の保護ピースは、本件発明1の「仮補填ケース」と「充填材」に相当する構成を備えていないものであるから、本件発明1の本質的部分を備えるものとはいえない。したがって、本件対象製品は、均等侵害に係る第1要件を充足しないものといえる。

