周知技術の認定

特許審査基準には、拒絶理由通知に進歩性違反で周知技術を用いる場合には、基本的に根拠となる周知文献等を示さなければなりません。今回は、周知技術として挙げられた文献が適切であり、拒絶審決が維持された事例を紹介します(令和7年(行ケ)第10049号 審決取消請求事件)。この事例のように、例え周知技術で挙げられた文献であっても、技術分野、課題、作用効果が主引例と同等である必要があります。

(審査基準)「審査官は、拒絶理由通知又は拒絶査定において、論理付けに周知技術又は慣用技術を用いる場合は、例示するまでもないときを除いて、周知技術又は慣用技術であることを根拠付ける証拠を示す。」

(要旨)乙3及び4はいずれも発明の名称を「乗客コンベア」とする、本願と同じ技術分野に属するものである。乙3の上記記載によれば、乙3には、乗客コンベアの制御装置である甲2構成と同じく、「乗客コンベアにおいて、乗り部(乗降口)の第1定位置の人を検出する第1人検出部(乗客検出部31)と、乗り部の第2定位置の人を検出する第2人検出部(乗客検出部32)とを備え、処理装置(移動速度検出部)は、人の歩行速度を第1人検出部及び第2人検出部の検出に基づいて演算する」技術(カッコ内は対応する乙3の記載)が開示されているものといえる。また、乙3に記載の技術は、人の歩行速度に応じた制御を行うという課題を有し、人を検出し、人の歩行速度を演算する作用・機能を有している。
上記乙4の記載によれば、乙4には、同じく「乗客コンベアにおいて、乗り部(乗降口の近傍)の第1定位置の人を検出する第1人検出部(乗客移動速度検出装置15D)と、乗り部の第2定位置の人を検出する第2人検出部(乗客移動速度検出装置16D)とを備え、処理装置(演算手段17)は、人の歩行速度を第1人検出部及び第2人検出部の検出に基づいて演算する」技術(カッコ内は対応する乙4の記載)が開示されているものといえる。また、乙4に記載の技術は、人の歩行速度に応じた制御を行うという課題を有し、人を検出し、人の歩行速度を演算する作用・機能を有している。そして、甲2に記載された、「人の歩行速度に応じた踏段の制御を行うために、第1定位置と第2定位置に人を検出する第1人検出部及び第2人検出部を設け、第1人検出部と第2人検出部の検出に基づいて人の歩行速度を演算すること」との構成が、本願の出願前に公知となったことについても当事者間に争いがない。乙3、4及び甲2の記載は、本願出願前に公開され、いずれも「乗客コンベア」の技術分野に属するものであるから、本願の技術分野である当該分野において、甲2に記載の「乗り部(乗込み口1e)の第1定位置の人を検出する第1人検出部(第1投受光器30a)と、乗り部の第2定位置の人を検出する第2人検出部(第2投受光器30c)とを備え、処理装置(モータ制御装置50)は、人の歩行速度を第1人検出部及び第2人検出部の検出に基づいて演算する」技術(カッコ内は対応する甲2の記載)は、本願の出願時において、周知技術であると認められる。