翻案・二次的著作物
知的財産関連の契約書には、通常、「著作権は〇〇に譲渡する」旨の記載があります。今回は、複雑な事案ですので、生成AIで内容を分析した翻案・二次的著作物関連の事例を紹介します(令和5年(ワ)第9267号 著作物使用差止請求事件)。この事例から、単に著作権を譲渡する旨の記載だけでなく、27条・28条(翻案・二次的著作物関連)まで譲渡するには明示が必要、という原則(61条2項)が重要です。
(要約)
1. 事件の概要(何を争ったか)
- 山代ガスの広告宣伝用ご当地ヒーローコンテンツ「ヤマシロン」に関するイラスト等(別紙著作物目録1〜11)について、
- 原告(神風プロダクション)が、被告ら(山代ガス/佐賀新聞サービス)に対し、
- 著作権(複製権、公衆送信権、翻案権、二次的著作物に関する権利など一切)および著作者人格権を原告が有すると確認するよう求めた(もともとは差止請求だったが、途中で確認請求に変更)。
2. 主要な事実関係(制作と契約の流れ)
- 原告は、佐賀新聞サービスから委託を受け、山代ガスの広告宣伝用ヒーロー企画として「ヤマシロン」関連の制作を進めた。
- 制作には「悪の秘密結社」も関与(スーツ制作等も想定)。
- 委託契約1(原告×佐賀新聞サービス)には「制作物の著作権は佐賀新聞サービスに帰属」との条項があったが、
- 著作権法27条(翻案権等)・28条(原著作者の権利)の譲渡についての明示(特掲)はなかった。
- 著作者人格権不行使の明示もなかった。
- 委託契約2(原告×山代ガス)では、山代ガスが「ヤマシロン」をマネジメントし、原告が運営事務局としてグッズ等を扱う枠組みが定められていたが、著作権帰属の明示規定はなかった。
- 原告は運用上、山代ガス名義の著作権表記を提案したり、グッズ制作時に山代ガスへ許諾申請するなどしていた。
3. 裁判所の判断のポイント
(1) 誰が「著作者」か(共同著作か)
- 裁判所は、制作過程(チャット等でのやり取り、修正指示、最終決定など)を踏まえ、
- 著作物1〜4・11は、原告と悪の秘密結社の共同著作物(原告も共同著作者)と認定。
- 著作物5〜10は原告単独作成(当事者間の争いなし)。
- したがって、原告は少なくとも「著作者人格権の主体(著作者)」となる地位を有する。
(2) 職務著作(著作権法15条)か
- 被告側は「山代ガスの職務上作成されたので山代ガスが著作者」と主張したが、
- 裁判所は、原告は独立法人で委託関係にすぎず、指揮命令関係も認めにくいとして、
- 職務著作は否定。
(3) 著作権は誰に帰属するか(譲渡の有無と範囲)
- 裁判所は、契約や当事者の運用(山代ガス名義での著作権表示、許諾申請など)を総合し、
- 著作権(少なくとも27条・28条以外の部分)は、原告から山代ガスへ移転(譲渡)したと認定。
ただし重要なのはここからで、
- 著作権法61条2項により、著作権を譲渡しても、
翻案権等(27条)と二次的著作物に関する原著作者の権利(28条)は、契約で「特掲」していない限り譲渡されない(譲渡者に留保推定)。 - 本件では、契約書に27条・28条の特掲がなく、推定を覆す事情も十分でないとして、
- 27条・28条の権利は原告に留保されたと結論づけた。
(※判決は、著作物1〜4は他共同著作者の関係で共有になる可能性も述べつつ、主文では「原告が有する」ことの確認にとどめる整理をしている)
(4) 著作者人格権を行使できるか
- 著作者人格権について明示の不行使合意はない。
- ただし裁判所は、経緯から
- 公表権:すでに公表されており、著作権譲渡により公表同意の推定も働くとして、原告は被告らに対し行使不可
- 氏名表示権:山代ガス名義表示を原告自身が提案し続けたこと等から、黙示の不行使合意があるとして行使不可
- 同一性保持権:不行使合意は認められず、行使可能
- という整理をした。
4. 結論(主文の要旨)
裁判所は、原告の請求のうち一部だけを認めた。
訴訟費用は概ね折半(2分し、一部原告負担)。
原告が有することを確認した権利
本件各著作物についての
著作権法27条の権利(翻案権等)および28条の権利ならびに著作者人格権
ただし人格権の行使については制限を付し、
原告は被告らに対し、人格権のうち同一性保持権は行使できるが、公表権・氏名表示権は行使できない
それ以外(「一切の著作権」「複製権等も全部原告」など)の確認請求は棄却

