営業秘密

不正競争防止法上の営業秘密に該当するには、非公知性、有用性、秘密管理性の立証が必要となります。今回は、一部の情報が営業秘密に該当すると判断された事例を紹介します(令和6年(ワ)第5424号 損害賠償等請求事件(甲事件)、令和6年(ワ)第8059号 損害賠償請求事件(乙事件))。日常業務の中でデータを保護するには、秘密管理性が重要でして、就業規則なので機密条項を設けて、一部の従業員のみにアクセス権限のあるデータとする必要があります。

(要旨)ア 非公知性及び有用性について
本件マスタメンテ情報は、別紙2「第1」の「1」ないし「6」(別紙3-1ないし別紙3-6記載に対応)の各情報に大別されるところ、被告は、同「1」ないし「5」記載の各情報について非公知性及び有用性はないと主張し、同「6」記載の情報については、令和5年8月に取得された古い情報であって有用性がないと主張する(なお、被告は、当初、同「6」記載の情報に有用性があることは認めていた。)。
この点、別紙2「第1」の「1」ないし「5」記載の各情報は、「1 別紙3-1「職員目録」に記載された職員名の①職員システムID、②職員名」、「2 別紙3-2「関連機関目録」に記載された関連機関名の①関連機関システムID、②支援事業所区分、③関連機関名」、「3 別紙3-3「関連機関担当者目録」に記載された関連機関担当者名の①関連機関システムID、②関連機関名、③担当課、④担当者名」、「4 別紙3-4「医療機関目録」に記載された医療機関名の①医療機関システムID、②医療機関名、③事業所番号、④住所」、「5 別紙3-5「医師目録」に記載された医師名の①医療機関システムID、②医療機関名、③医師システムID、④担当科、⑤医師名」を記載内容とするものである。これらの情報は、原告の訪問看護サービスの事業遂行において関係する機関及びその担当者並びに医療機関や医師の名称等に関する情報ではあるが、当該機関名や担当者、医師名自体は秘密に属する情報ではない上、原告と当該機関等が関係していることについても、一般的に公となるか、少なくとも原告において秘密として維持することが性質上できない情報あるいは利用者には明らかとなっている情報である(弁論の全趣旨)。そうすると、これらの情報は、少なくとも非公知性を欠くというべきである。
他方、別紙2「第1」の「6」記載の情報は、いずれも原告の利用者個人の情報であり、具体的には、医療保険や高齢者受給者証、高額療養費、介護保険、負担割合証及び公費に関する情報のほか、医療機関からの指示書や訪問看護における計画書等に関する情報である。これらの情報は、いずれも個人情報保護の観点からも保護の必要性の高い情報であり、その性質上、公知の情報とはいえず、契約継続中の利用者に関する情報である限り、原告の事業上有用な情報であるといえる。したがって、同「6」記載の情報は、非公知性及び有用性がある。
イ 秘密管理性
本件マスタメンテ情報の原告における管理状況は、前提事実記載のとおりであり、本件マスタメンテ情報が登録されていた原告システムへのアクセス制限措置が講じられ、本件マスタメンテ情報の操作に係るマスタメンテ機能の利用者が一部の従業員に限定されていた。また、証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告の就業規則(68条)によって原告の従業員に対して原告の「機密条項」に関する守秘義務の徹底が周知されていたこと(甲3)、本件マスタメンテ情報中の別紙2「第1」の「6」記載の情報は、利用者のセンシティブ情報を含む個人情報等であって、それ自体慎重に取り扱うべきことは自明である上、外部への持出しは問題であると被告A自身も認識していたこと(被告A本人)が認められる。このような、情報それ自体の性質、本件マスタメンテ情報の客観的な管理状況や被告Aを含む原告従業員の認識可能性に照らせば、本件マスタメンテ情報中の上記「6」記載の情報について、秘密管理性が認められる。

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