使用者責任
民法715条には、使用者責任の規定があります。民法709条に基づく不法行為による損害賠償請求をする際、従業員が不法行為を働いた場合に使用者も責任を追及されるというものです。ただし、民法715条1項ただし書きには免責事由がありますが、多くの判例で免責事由が認められていません。ただし、使用者責任が不明である場合や不法行為の時点で使用者ではなかった場合は、使用者責任を免れることができます。
民法第715条第1項
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
著作権侵害事件(令和 6年 (ネ) 10020号 損害賠償請求控訴事件)では、契約上の使用者責任が不明であり、不法行為の時点で使用者ではないとして、著作権侵害の使用者責任が認められませんでした。
「仮に被告とAの間で配信に関する何らかの契約が締結されていた としても、その具体的内容は証拠上不明であり、原告の主張に係る「オーガ ナイザー契約」の内容自体、甲5によっても、その内容が明確であるとはい うことはできない。それのみならず、SHOWROOMを利用した被告主催 の本件オーディションが平成29年9月に終了していること(甲2~4、1 0)と併せ考えると、前記甲14、15及び17の各記載は、Aが不法行為 を行ったとされる平成31年1月頃以降にAが被告の指揮監督を受ける関係にあったことを推認させるに足りず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。