特許の進歩性判断
特許の進歩性判断についてブログで簡単に説明しにくいため、あまり載せていませんでしたが、今回説明してみようと思います。進歩性が認められるには、引用発明の技術分野、課題、作用効果の違いを説明し、引用文献どうしを組み合わせる動機付けが無いことを立証することが最もオーソドックスな方法です。今回は進歩性が認められず取消決定を受け、知財高裁にその取消訴訟を提起した事件(令和5年(行ケ)第10061号 特許取消決定取消請求事件)を紹介します。
この事件で最も重要な本願発明の技術的思想の部分は、特許請求の範囲に記載されておらず、明細書等にも記載がないため、進歩性が否定されました。明細書を作成する際に、技術的思想を構成する具体的な構造は漏れなく明細書に記載しておく必要があります。
原告は、本件発明の噴射領域は、微粉炭噴射領域Sbが先端を開口した中空箇所を有さずにアンモニア噴射領域Saを覆っているものであるとして(特許異議手続においては、「第1燃料であるアンモニアの噴射領域の外周の周りに前記アンモニアとは異なる第2燃料の噴射領域を形成する」と表現していたものである。)、これと甲1技術の噴射領域との違いを主張する。 しかし、本件発明が、窒素酸化物の発生を低減させるため第1燃料であるアンモニアの噴射領域への酸素の流入を抑制するという技術的思想を有しているからといって、「微粉炭噴射領域Sbが先端を開口した中空箇所を有さずにアンモニア噴射領域Saを覆っている」構成が必然的に導かれるわけではない。
【請求項1】複数のバーナが二次元状に配置され、前記バーナから燃料を噴射して燃焼させる燃焼器であって、複数の前記バーナは、垂直に設けられた炉壁に二次元状に設けられ、 前記炉壁に設けられた複数の前記バーナは、第1燃料であるアンモニアの噴射領域の周囲に前記アンモニアとは異なる第2燃料の噴射領域を形成し、 個々の前記バーナは、二重管状あるいは三重管状に形成されており、中心から前記アンモニアを噴射し、周囲から前記第2燃料及び燃焼用空気を噴射することを特徴とする燃焼器。