職務発明

職務発明規程が適正に整備され、発明行為が会社の業務範囲に属し、費用負担も会社が担っていた場合、特許法35条3項の規定により職務発明であると認定されます。従業員であった原告が職務発明ではなく、冒認出願であるとして損害賠償を求めた判決を紹介します(令和6年(ワ)第70047号 損害賠償請求反訴事件)。

改めて、特許を受ける権利の帰属関係を明確にするうえで、職務発明規程を適正に整備しておくことが重要であることが再認識されました。

(判決要旨)

原告は、本件発明を行った平成20年当時、テクノリサーチ社に在籍していたところ、本件発明考案規定によれば、平成19年4月1日時点で、会社の業務範囲に属する発明で、かつ、従業員等の会社における現在または過去の職務に属する発明については、その特許を受ける権利は、テクノリサーチ社に承継される旨の定めがあり、当該定めは、特許法35条3項(平成27年法律第55号による改正前のもの)所定の定めに該当する。そして、前記認定事実によれば、本件発明はドラフトサーベイに用いられるドラフト差測定装置に関するものであるところ、テクノリサーチ社は、平成20年当時、日本製鉄から委託を受けて、ドラフトサーベイの改善業務を行っていたことが認められる。これらの事実の下においては、本件発明のようなドラフト差測定装置を開発し、第三者の検査会社によって担われるドラフトサーベイを改善することは、テクノリサーチ社の業務範囲に属するものであると認めるのが相当である。また、前記認定事実によれば、原告は、テクノリサーチ社において、ドラフトサーベイの改善業務に従事しており、各検査会社等によって行われるドラフトサーベイの問題点を指摘して改善案を提示し、テクノリサーチ社の経費でドラフト差測定装置の部材を調達したり、テクノリサーチ社の従業員という立場で、テクノリサーチ社の費用負担の下、ドラフト差測定20装置のテストや各種調査を行うなどしたりしていたことが認められる。これらの事実の下においては、ドラフトサーベイの改善に資する本件発明のようなドラフト差測定装置を発明することは、テクノリサーチ社における原告の職務に含まれると認めるのが相当である。

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