進歩性の動機付け
特許無効審判請求に係る不成立審決の取消訴訟事件(令和 5年 (行ケ) 10100号 審決取消請求事件)における進歩性の判断について紹介します。下記のように、進歩性を判断する際に、構成部材が一体であるか別体であるかが本願発明の技術的特徴であり、引用発明に別体の構成部材とする開示や示唆が無ければ、引用発明に基づいて本願発明の進歩性を否定する動機付けとならないことがあります。
(概要)本件発明1において、「ガス・スクラバ」と「バッフ ァ・タンク」とは別体の構成部材であると解され、「バッファ・タン ク」は、別体の構成部材として設けたところに技術的な意義があるというべきであり、甲1発明1の 「ジェットバブリング反応槽」の下部空間は、そのサイズや容量如何 によっては「バッファ・タンク」の機能を有することがあるとしても、 「ガス・スクラバ」とは一体の構成部材であるから、「バッファ・タンク」 に係る相違点としました。 そして、「ジェットバブリング反応槽」や「スプレー式吸収塔」の下部 空間が、本件発明1の「バッファ・タンク」と同等の機能を有することがあるとしても、それだけでは一体の構成部材をあえて別体の構成部材とする動 機付けとなるものということはできず、他に動機付けや示唆が存在することを認めるに足りる証拠もないと認定しました。