AI経営の識別力
「AI経営」の文字を標準文字とし、第41類「書籍の制作,人工知能(AI)に関する教育用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)等」を指定役務とした登録商標の異議申し立て事件について、識別力が認められた事例を紹介します。
異議申立人は、『本件商標を構成する「AI」の文字は、「人工知能」の意味を有する広く親しまれた語であるから、全体として「人工知能(AI)を活用した経営」程の意味合いを容易に理解させるものである。そして、以下に説明するように、本件商標に係る指定役務との関係において、人工知能(AI)を活用した経営を表すものとして「AI経営」の文字が、一般に使用されていることが認められる。』として識別力がない(商標法第3条第1項第3号違反)と主張しましたが、登録が維持されました。
その理由は、『申立人の提出に係る証拠及び職権をもって調査するも、本件商標の指定役務を取り扱う業界において、「AI経営」の文字が役務の質等を直接的に表すものとして、取引上一般に使用されていると認めるに足りる事実及び取引者、需要者が、役務の質を表すものと認識し得るという特段の事情も見いだせない。さらに、本件商標の登録査定時において、本件商標が役務の質を表示するものとして、我が国の取引者、需要者に前記意味合いをもって認識されていたとまで認めることはできない。』というものです。
近年、特許の分野でも生成AIを活用した技術の特許が多く成立しており、商標の分野でAIを用いた標準文字が登録された興味深い事例です。日本は生成AIの基礎技術において欧米諸国に後れを取っていますが、生成AIの活用分野で国際競争力を高めるべく、早めに知的財産権を取得することを推奨します。