プログラム特許と方法特許
アプリを開発した発明において、特許請求の範囲には、物(装置、プログラム)の発明と方法の発明とをカテゴリーを分けて記載することが通常です。日本においてはプログラム特許が認められていますが、米国においてはプログラム特許が認められていません。そこで、日本では物の発明としてプログラム特許が認められていますが、あえて方法特許を選択した場合の間接侵害が争点となった事例を紹介します(令和6年(ワ)第70583号 損害賠償等請求事件)。方法特許の場合、間接侵害の対象は、アプリそのものではなく、アプリがインストールされた端末であると認定されていますので、方法特許とプログラム特許を両方とも特許請求の範囲に記載することが安全です。
(要旨)原告らは、スマートフォン等にインストールされるアプリケーションである被告製品の製造販売が、特許法101条4号及び5号の間接侵害に当たると主張する。そこで検討するに、特許法101条4号及び5号は、その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施することが可能である物についてこれを生産、譲渡等する行為を特許権侵害とみなすものであり、特許発明に係る方法を実施することが可能である物の生産に用いられる物を生産、譲渡等する行為を特許権侵害とみなすものではないものと解される(平成17年知財高裁特別部判決参照)。前提事実⑸イのとおり、被告製品の利用者(ユーザー)は、被告製品をスマートフォン等にインストールし、当該スマートフォン等でアプリケーションを起動して、別紙被告製品操作・動作説明書記載のとおり動作させていたのであるから、その物自体を利用して本件各発明に係る方法を実施することが可能である物は被告製品をインストールしたスマートフォン等であって、被告製品は、そのようなスマートフォン等の生産に用いられる物である。そうすると、被告製品の製造販売が同条4号及び5号の間接侵害に当たるということはできない。これに対し、原告らは、被告製品の製造販売が特許法101条4号及び5号の間接侵害に当たることの根拠として、①特許出願において物の発明と方法の発明の選択は、出願者が任意に行うものであり、プログラムに係る発明を方法の発明として特許出願した場合にもその保護を図る必要があること、②プログラムが同条2号の「その物の生産に用いる物」に当たると解するのに、同条5号の「その方法の使用に用いる物」に当たらないと解するのは、均衡を失すること、③スマートフォン等とプログラムの関係は、単なる物と部品という関係とは異なるから、プログラムを動作させることで使用される方法の発明について、同号の「物」にプログラムが含まれると解しても、発明の方法を実施する機能を備えるプログラムに限定されるため、間接侵害の成立範囲は不当に広がらないこと、④同条4号は、「その方法の使用にのみ用いる物」と「のみ」による限定がされており、間接侵害の成立範囲が不当に広がることもないことなどを主張する。しかしながら、上記①②について、物の発明についての間接侵害(同条1号及び2号)と、方法の発明についての間接侵害(同条4号及び5号)は、それぞれ「物の生産」又は「方法の使用」という実施行為との関係で間接侵害の成立範囲を規定し、プログラムが「用いる物」に当たるか否かは、実施行為との関係で決まるのであるから、物の発明と方法の発明で間接侵害の成立範囲が異なることがあるのは当然である。そして、プログラムは物の発明として特許法における保護対象となり得る(同法2条3項1号、4項)のであるから、原告会社において、物の発明としてではなく、あえて方法の発明として本件各発明に係る特許を取得した以上、被告製品の製造販売について間接侵害が成立しないと解したからといって、同法による保護に欠けるものとはいえない。
また、上記③④について、同条4号の「その方法の使用に…用いる物」及び同条5号の「その方法の使用に用いる物」が、その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施することが可能である物を意味し、そのような物の生産に用いられる物を含まないと解すべきであるのは前記⑴のとおりであり、被告の主張する点は、被告製品の製造販売が特許法101条4号及び5号の間接侵害に当たらないとの前記⑴の判断を左右するものではない。原告らのその余の主張も以上の判断を左右するものではない。

