信義則違反
民法第1条第2項において「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」と規定されています。この信義則は、訴訟当事者間の信頼関係を維持して、訴訟の公正性を担保するために設けられており、信義則違反が争われた事例を紹介します(令和8年(ワ)第70079号 不当利得返還請求事件)。後訴が前訴の蒸し返しに当たる場合、信義則違反となります。
(要旨)原告は、被告らが、本件対象期間中、名称が不明の電子契約サービスを提供するに際してイ号物件を使用したと主張し、被告らは、被告NTTデータグループらがCECサービスの名称で電子契約サービスを提供していたことは認めるものの、被告らが、本件対象期間において、その余の名称で電子契約サービスを提供していたことを否認している。原告は、被告らの行為として、イ号物件が使用されたとする電子契約サービスの名称を具体的に特定していないし、その主張の裏付けとして提出する甲2(書籍「~企業間電子商取引のための~電子契約導入のすすめ」(2004年4月10日第1刷発行。)の抜粋)にも、被告らが、本件対象期間において、CECサービス以外の名称で電子契約サービスを提供していたことの記載は見当たらない。そして、原告は、本件対象期間のうち、前訴の侵害期間より前及び後の期間において、CECサービスに使用された原本性証明に係る装置が設計変更されたことなど、前訴の侵害期間より前及び後におけるCECサービスに使用された原本性証明に係る装置が前訴の侵害期間の装置と異なることの具体的な主張をしていない。以上を総合すると、原告は、本件訴訟において、対象装置を使用されるサービス名ではなくその構成により特定し、被告らの行為におけるサービス名を不特定なものとし、本件対象期間を前訴の侵害期間より長いものとしているものの、前訴において認定された被告NTTデータらの行為と異なる行為を特定して主張したものとはいい難く、結局、被告NTTデータグループらがCECサービスに使用した原本性証明に係る装置(前訴サーバ)が本件発明の技術的範囲に属するか否かについての前訴の判断を争うために、本件訴訟を提起したものにほかならないというべきである。そうすると、本件訴訟は前訴を実質的に蒸し返すものといわざるを得ず、被告NTTグループらに対する本件訴訟の提起は、信義則に反し、不適法である。

