商標の使用行為(広告)
商標法2条3項8号には、商標を広告等において用いる行為を標章についての「使用」に当たる旨が規定されています。今回は、広告等に用いる行為が商標の使用にあたるか否かが争われた事例を紹介します(令和8年(行ケ)第10030号 審決取消請求事件)。広告での使用(頒布)には、公衆が閲覧可能な状態に置く程度に流通させることが必要です。
(要旨)商標法2条3項8号は、「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」を、標章についての「使用」に当たる旨を規定している。その趣旨は、商標を広告等において用いることによっても商標に営業上の信用が蓄積されることがあり、また、他人がこのような態様で商標を用いることによっても商標に化体された営業上の信用が害されることがあるため、商品が流通される等の前段階における広告等に商標を付して流通させることも、「使用」としてみるべきであるという点にあると解される。このような趣旨に加え、同号では「頒布」が「展示」と併記されていることや、一般に「頒布」という語が「広くゆきわたるように分かち配ること」という意義を有することに照らすと、同号にいう「広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して」「頒布」するとは、標章を付した広告等を、公衆が閲覧可能な状態に置く程度に流通させることを意味すると解するのが相当である。これを本件についてみると、証拠(甲9、10)によると、原告は、令和7年3月、サイセイメディカルに対し、本件標章を付した発注書(本件発注書)を二度にわたり交付したことが認められる。しかるところ、サイセイメディカルは、原告が化粧品やサプリメントの製造を委託した先であることは、当事者間に争いがない。また、本件商標が付された本件発注書は、サイセイメディカル1社のみに交付されたものにすぎない。このように、自身の商品の需要者として想定される者ではない1社のみに宛てて作成した注文書を2回交付したことのみをもっては、標章を付した取引書類を公衆が閲覧可能な状態に置く程度に流通させるものとはいえず、「商品…に関する…取引書類に標章を付して…頒布」したものと認めることはできない。なお、原告は、令和7年6月頃、「商品名:REVISHAKE LOTION 150ml」と記載された発注書をサイセイメディカルに交付したと主張するが、これが現実にサイセイメディカルに交付されたかは明らかではない。仮に、これが交付されていたとしても、同発注書の性質は本件発注書と同じであって、上記結論を左右しない。そして、他に、原告が、要証期間中に本件商標を使用したと認めるに足りる具体的な事実関係は認められない。

