過失
著作権侵害の損害賠償請求において、過失が重要な要素となります。今回は、公衆送信権や氏名表示権の過失の有無が争点の1つとなった事例を紹介します(令和6年(ワ)第70293号 損害賠償請求事件)。大量に映画を送信する場合に字幕を付さなかったとしても、指摘を受けた形跡がない場合には字幕を付すことを確認する注意義務があったとは言えず、過失がないと認定されました。
(要旨)被告スカパーJSATについて認定事実エのとおり、被告スカパーJSATは、ジュピターエンタテインメントとの間の本件供給基本契約2及び3に基づき、ジュピターエンタテインメントから受信した番組の全てについて変更などの改変を加えることなく、受信と同時に視聴者に再送信又は提供することが義務付けられており、番組供給者であるジュピターエンタテインメントから受信した番組を機械的に放送することになっていた。また、そのような再送信又は提供に際して、被告スカパーJSATは、番組供給者であるジュピターエンタテインメントから、本件各映画を含む全ての番組について、音楽著作権の処理を除き、自己の責任と費用において処理している旨の表明保証を受けていた。加えて、認定事実キ(ア)及び(ウ)のとおり、被告スカパーJSATでは、毎日、大量の番組の放送や配信を行っており、「ムービープラス」だけでも1日当たり15件程度、1年間で約600本の映画を放送していた。上記のとおり、被告スカパーJSATは、番組供給者から受信した大量の映像作品の放送や配信を機械的に行っており、ジュピターエンタテインメントとの関係においても、変更などの改変を加えることなく、受信と同時に視聴者に再送信又は提供することが義務付けられていたことからすれば、被告スカパーJSATにおいて、事前に放送する個々の番組の内容を確認することは想定されていなかったし、実際にそのような対応は現実的ではなかった。そして、被告スカパーJSATは、このような事情を踏まえ、番組の権利処理について表明保証を受けており、本件全証拠によっても、ジュピターエンタテインメントや本件各映画の関係者等から本件各字幕の権利処理に疑義を生じさせるような指摘などを受けた形跡がないことからすれば、被告スカパーJSATにおいて、番組放送前に、本件各映画に係る本件各字幕について権利処理がされているかを確認すべき注意義務があったとは認められない。イ 被告スカパー・エンターテイメントについて認定事実ウのとおり、被告スカパー・エンターテイメントは、ジュピターエンタテインメントとの間の本件供給基本契約1に基づき、ジュピターエンタテインメントから供給された番組について、改変、カット、編成替え等を行わず、供給された信号に関し、圧縮等の技術的操作のみを加えた信号を送信することが義務付けられており、番組供給者であるジュピターエンタテインメントから受信した番組を機械的に放送することになっていたものである。…したがって、被告スカパーJSAT及び被告スカパー・エンターテイメントに、原告の公衆送信権及び氏名表示権を侵害したことについて過失は認められない。

