Airペイ
特許請求の範囲の用語の解釈にあたっては、明細書の記載を参酌することができます(特許法第70条第2項)。今回は、「クレジットカード会社」との用語が、クレジット決済代行サービス会社も含まれるか否かが争われた事例を紹介します(令和6年(ワ)第70225号 特許権侵害等に基づく損害賠償請求事件)。Airペイ(クレジット決済代行)は、明細書の記載から、特許請求の範囲の「クレジットカード会社」に含まれないと判断されました。
(要旨)クレジットカード決済事業者については、一般に、クレジットカード会員に対してクレジットカードを発行し、クレジットカード会員の利用代金を管理するイシュア(クレジットカード発行会社)及びクレジットカード加盟店と契約をし、加盟店のクレジット決済取引の売上げを管理するアクワイアラ(加盟店契約会社)を同一の会社が兼ねる場合と別会社が行う場合があるが、別会社の場合でも両社が連携して決済サービスを提供することになる。また、クレジットカード決済代行サービスとは、加盟店とクレジットカード決済事業者の間に立ち、加盟店契約、データ処理、精算などを一括提供するサービスであるが、一般的な語義としては、「クレジットカード会社」が、クレジットカード決済代行会社やクレジットカード決済代行サービス部門を含むものではない(甲30、弁論の全趣旨)。特許請求の範囲には、「クレジットカード加盟店が加盟するクレジットカード会社」(構成要件A)との記載があり、また、クレジットカード加盟店のクレジットカード決済取引による売上データの集計、月間実績決済高の算出及び当月償還金額の設定(以下、これらの作業を一括して「償還金額の設定等」と総称する。)を「クレジットカード会社毎」に行い(構成要件D)、債権買取債券の償還の終了や償還期間の延長を「クレジットカード会社の情報処理サーバ」に通知する構成(構成要件F、G)が記載されているものの、イシュア及びアクワイアラの別についての記載はなく、特許請求の範囲の記載からは、「クレジットカード会社」がクレジットカード決済事業者のうちイシュアとアクワイアラのいずれを示すのかは一義的に明らかではないが、これがクレジット決済代行会社やクレジット決済代行サービス部門を含むことを示す記載はない。本件明細書にもクレジットカード会社の意義を示す記載はないが、「本スキームにおいて、クレジットカード加盟店10とクレジットカード会社30の間に、クレジットカード管理会社やクレジットカード決済代行会社を含んでよい。」(【0016】)、「クレジットカード会社データベース112には、また、クレジットカード管理会社及びクレジットカード決済代行会社についてのデータファイルも保存されている。」(【0023】)として、クレジットカード会社とクレジットカード決済代行会社を別の主体として明確に区別している。また、本件明細書の実施例の記載においても、償還金額の設定等をクレジットカード会社毎に行い、償還の終了や償還期間の延長をクレジットカード会社の情報処理サーバに通知する実施例(【0012】~【0039】、【図1】、【図2】)が示され、「クレジットカード加盟店のクレジットカード決済取引による売上データ」(構成要件C)の取得方法について、「クレジットカード決済取引の売上データの取得は、申請加盟店の指示を受けたクレジットカード管理会社又はクレジットカード決済代行会社から取得するものであってよい」こと(【0028】)が示されているが、クレジットカード会社に代えてクレジットカード決済代行会社やクレジットカード決済代行サービス部門とすることについては何らの記載もない。以上の特許請求の範囲及び本件明細書の記載に照らせば、本件発明の「クレジットカード会社」が、クレジットカード決済代行会社やクレジットカード決済代行サービス部門を含むものであると解することはできない。

