不明確
特許法第36条第6項第2号には、「特許を受けようとする発明が明確であること。」が規定されています。今回は、訂正事項が不明確であり、訂正の再抗弁には理由がないと判断された事例を紹介します(令和7年(ネ)第10075号 特許権侵害差止等請求控訴事件)。長さや距離といった数値範囲に技術的意義がある場合、明細書には、その説明を丁寧に記載する必要があります。
(要旨)訂正発明3について見ると、訂正発明3は、「対向する山頂部(7)の長さが略同じ長さ」(構成要件F)との構成を備え、これにより、「山頂部の長さ」を特定し、また、「一対の歯部(5、6)を噛み合わせるときには、一方の歯部(5)に有する前記山頂部(7)の両側の曲面形状の各端部(7a、7b)と当該各端部(7a、7b)と対向する他方の歯部(6)に有する前記山頂部(7)の両側の曲面形状の各端部(7a、7b)とが、歯部幅方向縦断面視において一度も重なり合うことがない」(構成要件H)との構成を備え、かつ、特定するものであるから、訂正発明3に係る特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号の規定に適合するというためには、「山頂部の長さ」はどの部分の長さか、「略同じ長さ」はどの程度の差異を許容するのかが、当業者において明確に理解できるように記載されていることを要するというべきである。しかるに、「山頂部の長さ」を特定する前提となる「曲面形状の端部」との用語の意味が不明確であり、したがって、山頂部分の範囲や傾斜面部側の位置も不明確であることは、訂正発明1と同様であり、そうすると、「山頂部の長さが略同じ長さ」との用語の意味も不明確というほかない。そして、本件明細書には、発明が解決しようとする課題や発明の効果について、前記⑴ウ、オ(イ)、(ウ)のとおりの記載があるものの、これによっても、構成要件F、Hの構成を備えることについて特段の技術的意義は認められない上、出願時において、「山頂部の長さ」の特定を可能とするような技術常識が存在したと認めるに足りる証拠もないことからすると、訂正発明3に係る特許請求の範囲の記載も、本件明細書の記載及び図面を考慮し、当業者の出願当時における技術常識を基礎としても、当業者の利益を不当に害するほどに不明確であるといわざるを得ない。

