本質的部分(均等侵害)
均等侵害について、第1要件(構成が異なる部分が特許発明の本質的部分でないこと(非本質性))が争点に上げられることが多いです。今回は、第1要件の本質的部分の認定について争点の1つとなった事例を紹介します(令和7年(ネ)第10082号 損害賠償請求控訴事件)。本質的部分の認定にあたっては、まず、明細書の記載から従来技術に見られない特有の技術的特徴を把握することが必要となります。
(要旨)本件発明1の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分は、① 課金対象の遊技価値アイテム(「第1の仮想アイテム」)と課金対象外の遊技価値アイテム(「第2の仮想相アテム」)を区別なく利用可能とし、② 課金対象外の遊技価値アイテムに優先して課金対象の遊技価値アイテムを消費させる手段を備えたゲームシステムを提供することにあり、予備的主張に係る相違点は本件発明1の本質的部分ではない旨の主張をする。しかしながら、本件明細書1に、本件発明1が解決しようとする課題として、 「従来のサービスにおいては、遊技者が経済的価値化体物と交換した遊技価値アイテムと、遊技結果に基づいて獲得した遊技価値アイテムとに区別がないため、遊技者は、遊技結果で獲得した遊技価値アイテムのみを用いて遊技をし続けることができ、そのため、遊技が無料化してしまい、仮想的な遊技場を営業するものにとっては収益を生みづらいものとなってしまっていた。」(【0004】)、「本発明は、遊技結果により獲得した遊技価値アイテムを用いて遊技をし続けることができる場合におけるような、収益を生みづらい構造を改良したゲーム装置およびゲームプログラムを提供することを目的とする。」(【0005】)と、また、その作用効果として、「仮想的な遊技場を営業するサービス提供側の立場からすれば、直接的な収益に繋がる課金メダルMcを先に消費してもらうことで収益向上を図りやすいという利点もある。」(【0036】)と記載されていることを考慮すると、本件発明1における、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分は、購入手続を行うことでユーザに付与される遊技価値アイテム(「第1の仮想アイテム」)と、ゲームの実行によりユーザに付与される遊技価値アイテム(「第2の仮想アイテム」)を区別なく利用可能なゲームを実行するゲームシステムにおいて、「第1の仮想アイテム」の数量と、「第2の仮想アイテム」の数量とをそれぞれ記憶する手段を備えることにより(構成要件1B)、ユーザが「第1の仮想アイテム」及び「第2の仮想アイテム」の両方を保有している場合に、「第2の仮想アイテム」に優先して「第1の仮想アイテム」を消費させる手段を備えたこと(構成要件1C)にあると解される。これに対し、被告ゲームシステムは、「第1の仮想アイテム」である購入ルビー(無料ルビー)及び「第2の仮想アイテム」であるゲーム実行ルビーを合算した数量を、無料ルビーの総量として表示する構成であり、「第1の仮想アイテム」の数量と、「第2の仮想アイテム」の数量とをそれぞれ記憶する手段を備える構成でも、したがって、「第2の仮想アイテム」に優先して「第1の仮想アイテム」を消費させる手段を備えた構成でもない。そうすると、本件発明1の構成中の被告ゲームシステムと異なる部分(予備的主張に係る相違点)は本件発明1の本質的部分というべきであるから、被告ゲームシステムは、均等侵害の第1要件を充足しない。したがって、その余の点について判断するまでもなく、本件発明1について均等侵害は成立しない。
【請求項1】1A 購入手続きを行なうことでユーザーに付与される第1の仮想アイテム、および、ゲームの実行によりユーザーに付与される第2の仮想アイテムを区別なく利用可能なゲームを実行するゲームシステムであって、1B 前記ユーザーに対応付けて、前記第1の仮想アイテムの数量と、前記第2の仮想アイテムの数量とをそれぞれ記憶する手段と、1C 前記ユーザーが前記第1の仮想アイテムおよび前記第2の仮想アイテムの両方を保有している場合、第2の仮想アイテムに優先して第1の仮想アイテムを消費させる手段と、1D を備えたことを特徴とするゲームシステム。

