識別力が肯定された事例NO1
拒絶査定不服審判で商標法第3条第1項第3号の識別力があるとして拒絶査定が覆された審決事例3件を紹介します。基本的に拒絶理由のある指定商品・指定役務を削除して商標登録が認められる事例が多いですが、(3)のように、「~」を挿入することで識別力が得られた事例が参考になります。
(1)「インナービューティーカウンセラー」の文字を標準文字とし第41類「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,インターネットを利用して行う映像の提供,映画の上映・制作又は配給,インターネットを利用して行う音楽の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),運動用具の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与」及び第44類「入浴施設の提供,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,整体,はり治療,介護,医療用機械器具の貸与,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与」を指定役務とした事例
「インナービューティー」の語は、「体の内側(内臓)から美しくなること」を表すものとして本願指定役務を取り扱う業界を含む様々な分野において一般に使用されている語と認められる。よって、「インナービューティーカウンセラー」の語からは、「体の内側(内臓)から美しくなる「インナービューティー」について相談に応じ、適切な指導・助言をする人」を認識させる。そうすると、本願商標が本願指定役務中、第44類「美容に関する相談・助言・指導,美容,理容,健康に関する指導及び助言,医療情報の提供,健康診断,栄養の指導」に使用された場合には、取引者、需要者は、当該役務が、体の内側(内臓)から美しくなるという「インナービューティー」について指導・助言を行う者によって提供される役務であることを示したものと理解するというのが相当である。本願の指定役務中、拒絶の理由に該当する指定役務を削除する補正をしたから、拒絶の理由は解消した
(2)「時空間同期」の文字を標準文字とし第41類「インターネットを利用して行う映像の提供,インターネットを利用して行う音楽の提供」を指定役務とした事例
原査定は、本願商標は「時空間同期」の文字を標準文字で表してなるところ、これは、構成全体として「ローカルにデバイスが時刻同期し、互いに位置を把握している状態」ほどの意味合いを認識させるから、本願商標を本願の指定役務中「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供」(以下「拒絶対象役務」という。)に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「ローカルにデバイスが時刻同期し、互いに位置を把握している状態に関するセミナーの企画・運営又は開催」等、「ローカルにデバイスが時刻同期し、互いに位置を把握している状態に関する役務」であると認識するにとどまる。当審補正役務に補正された結果、原査定における拒絶の理由に係る指定役務(拒絶対象役務)は全て削除されたものと認められる。したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定の拒絶の理由は、解消した。
(3)「ご~かくマスク」の文字を標準文字として第10類「五角形の衛生マスク」」を指定商品とした事例
本願商標は、上記2のとおり、「ご~かくマスク」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「ご~かく」の文字は、「~」の記号が、長音記号の代わりなどとして用いられることが多いことから(「IT用語辞典 e-Words」https://e-words.jp/w/波線.html)、「ゴーカク」と読むことができるものの、「ご~かく」の文字とその読みである「ゴーカク」から、「ゴカク」と読まれ「五角形の略」(「広辞苑 第七版」発行者:株式会社岩波書店)を意味する「五角」又はこれを平仮名表記した「ごかく」の語が認識されるものとはいい難いものである。また、当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「ご~かくマスク」の文字が、商品の品質、形状等を表すものとして一般に使用されている実情はうかがうことができず、さらに、本願商標に接する取引者、需要者が、当該文字を商品の品質、形状等を表すものとして認識するというべき事情も発見できなかった。そうすると、本願商標を、その指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、原審説示の「五角形のマスク」であることを理解し、認識するとはいえず、本願商標は、商品の品質、形状等を表すものとはいえないから、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものである。