著作者人格権
著作者人格権は、公表権・氏名表示権・同一性保持権などが含まれ、譲渡できない一身専属の権利です。今回は、もとにイラストに対する著作権人格権の不行使について争点の一つとなった事例を紹介します(令和6年(ワ)第70396号 著作権侵害等差止請求事件)。メロクロのようにヒットキャラクターが生まれる前に、著作権だけでなく著作者人格権に関する取り決めも契約書に記載しておくことが重要です。
(要旨)被告は、原告からウィーヴに対し、平成17年3月2日頃までに本件イラストの著作権が譲渡されたと主張するから、著作権譲渡の合意の成否について検討する。平成17年3月2日当時、原告からウィーヴに対する著作権譲渡をする旨の書面は作成されていないものの、原告とウィーヴが平成21年7月以降に作成した被告宛ての平成17年3月2日付け本件確認書(甲29(乙22の2))及び平成23年9月から10月頃に作成した本件譲渡証書の記載によれば、原告は、平成21年頃から平成23年頃の時点において、平成17年3月2日頃に、本件イラスト等の著作権が原告からウィーヴを経由して被告に譲渡し、原告が被告に対し本件イラスト等の著作者人格権を一切行使しないことに同意したと認識していたものと認めるのが相当である。また、ウィーヴが本件確認書を作成し、本件登録についての登録申請をしたこと(認定事実⑶ウ)は、ウィーヴが、原告から譲渡を受けた本件イラスト等の著作権を被告に譲渡したことを示すものであり、ウィーヴにおいても同様の認識を有していたことを示すものといえる。そして、本件映画は被告がイラストの著作権を有するキャラクターであるマイメロディを主人公とするテレビ用アニメーション映画であり(前提事実⑴イ、⑵ア)、被告が制作会社である原告から、制作過程で新たに創作するキャラクターに係るイラストの著作権の譲渡を受け、著作者と著作者人格権不行使を合意しておくことは、本件映画の著作権等の管理を一元的に行う上で合理的な対応であり(乙7参照)、このことは本件映画の共同製作が合意された時点で当然に認識されていたと考えられることにも照らせば、原告とウィーヴ及びウィーヴと被告は、それぞれ原告が本件映画の制作過程で新たに創作するキャラクターに係るイラストである本件イラストの著作権を、その完成時に原告からウィーヴ、ウィーヴから被告に譲渡したというのは、不自然なことではない。被告によるクロミのキャラクターを用いた事業が相応の規模感で展開する中で(認定事実⑵イ)、原告が、令和4年4月頃になって、クロミのキャラクターが有名になったとしてウィーヴに本件相談をするまで著作権者としての行動をとっておらず、被告に対しては、令和5年まで、何らの異議を述べていないことも上記認定に沿うものである。以上によれば、原告は、本件イラストの著作権を、遅くとも平成17年3月2日頃までにウィーヴに譲渡したものと認められる。

