食品衛生法違反と債務不履行
食品衛生法違反を指摘されたとき、仕入先の品質が悪かったためであるといった事件はよく耳にします。今回は、仕入先の債務不履行に基づく損害賠償が認められなかった事例を紹介します(令和8年(ネ)第10035号 売買代金支払請求控訴事件)。どの業界でも言えることですが、取引先が品質の良いものを提供してくれるかの判断は重要となります。
(要旨)控訴人は、被控訴人が死んだウナギを仕入れて加工し、これを控訴人に輸出、販売していたと主張し、その結果、控訴人は、当該ウナギ加工品の単価を減額して販売することを余儀なくされた旨主張する。そこで検討すると、控訴人が提出した動画(乙10、37の1~4、38)のうち、ウナギを加工している場面を撮影したものをみても、加工に係るウナギが、活きたものが氷水に浸けられて仮死状態にあるのか、既に死んだものであるのかは、判然としないというほかはない。控訴人代表者と関係者とのチャットのやり取り(乙9、19、33、36、39、43)やAの陳述(乙34)は、いずれも、商品にクレームや返品があった旨や被控訴人が死んだウナギを加工し販売している旨を抽象的に言及するにとどまっており、売買の目的物が契約により定められた水準に適合していなかったことを具体的に認定するに足るものではない。被控訴人につき公表された食品衛生法違反の事実(乙42)は、本件対象契約よりも後の出来事であって、その具体的内容も判然としないから、これをもって、本件対象契約の債務不履行を認定することは困難である。さらに、控訴人が商品の単価を減額して販売した原因が、被控訴人が販売した商品の品質によるものであることを示す証拠や事実関係も見当たらない。以上によると、被控訴人に本件対象契約上の債務不履行があって、これにより控訴人が損害を受けたものと認めることはできない。よって、本件対象契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権を自働債権とする控訴人の相殺の抗弁には理由がない。

