訴えの利益

無効審決取消訴訟を提起することは、特許権の存続期間満了後であっても、特許権の存続期間の満了前の侵害行為について損害賠償請求される可能性があることから、可能です。今回は、無効審決取消訴訟の訴えの利益が争点の一つとなった事例を紹介します(令和7年(行ケ)第10077号 審決取消請求事件)。複数の製品を販売しており、一部の製品に対して権利行使されたことがあったとしても、他の製品について損害賠償請求される可能性があることから、無効審決取消訴訟の訴えが認められます。

(要旨)特許権の存続期間の満了後であっても、特許権侵害を問題にされる可能性が少しでも残っている限り、そのような問題を提起されるおそれのある者は、当該特許を無効にすることについて利害関係を有し、特許無効審判請求を行う利益(したがって、特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益)を有することは明らかである。したがって、訴えの利益が消滅したというためには、客観的にみて、原告に対し特許権侵害を問題にされる可能性が全くなくなったと認められることが必要であり、特許権の存続期間が満了し、かつ、特許権の存続期間中にされた行為について、原告に対し、損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり、刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情が存することが必要であると解すべきである(知的財産高等裁判所平成28年(行ケ)第10182号、第10184号平成30年4月13日特別部判決・最高裁判所HP参照)。 ⑵ これを本件についてみると、本件特許権は既に存続期間満了により消滅しており(前記第2の1⑵)、また、別件訴訟において被告の請求を一部認容する判決が確定しているが(同⑸)、別件訴訟において対象とされた原告の製品は製品名で特定された蓄電システム13品目及び電池パック1品目であり、原告がこれら以外に本件特許権の権利行使の対象となり得る製品をその存続期間中に製造販売していた可能性を否定することはできない。そうすると、原告に対して損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり、刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情が存するとはいえないから、本件訴えについては訴えの利益があると認められる。

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