ロボットと人間の眼
進歩性を否定するとき、引用文献同士を組み合わせる動機付けが必要となります。今回は、ロボットに人間の眼を適用することの阻害要因が認められなかった事例を紹介します(令和7年(行ケ)第10100号 審決取消請求事件)。阻害要因が認められるには、引用文献に本願発明の構成を適用することを否定するような記載が必要となります。
(要旨)これに対し、原告は、①周知事項は人間の眼球に関する事項であるから、人間の眼球とロボットの眼とを同視して論ずることはできない、②人間の眼球の特徴をロボットの眼に適用することが人間とロボットの間のコミュニケーションを高めることには必ずしもつながらない、③当業者にとっては、固視微動をロボットの眼に適用することとロボットと人間との間のコミュニケーションを高めることとの関連性をにわかに理解することはできないなどと主張する。しかし、上記①及び②については、ロボットを親しみやすいものとするために、その眼と人間ないし生物の眼を類似させることが好まれることは引用文献1及び3に記載されたとおりであり、その際、具体的に人間の眼球の特徴のうち、どのようなものをロボットの眼に適用するかは、当業者が適宜採用し得る事項と解される。原告は「不気味の谷」についても主張するが、ロボットの眼に固視微動を適用すると不気味に感じられるといったことも本件の証拠上うかがわれず(かえって前記認定の本願明細書等の記載によると、固視微動に似た動きをさせることによりロボットの生物感が一層高まり、本願発明の主たる目的であるロボットがユーザを見つめる際の好適な制御方法が達成されると解される。)、これを適用することに阻害事由があるとも認められない。また、上記③については、固視微動をロボットの眼に適用することとロボットと人間との間のコミュニケーションを高めることとの関連性は、前記2に判示したとおり引用文献3に記載されているから、その関連性を理解することができると解される。

