名誉棄損と名誉感情侵害
名誉毀損では外部的名誉・社会的名誉が問題になり、名誉感情侵害では主観的名誉が問題になります。名誉棄損と名誉感情侵害に当たると判断された事例を紹介します(令和6年(ワ)第70555号 損害賠償請求事件)。社会的評価を低下させた場合は名誉毀損、人格的利益を侵害する場合は名誉感情侵害になります。
(要旨)本件発言1は、原告を「あのアホは あのアホ男は」、「まあ要はアホなんだろうから」、「あのヒモ男」、「●●歳のさこう髭生やしたさ むさい男」(●●は原告夫の年齢)、「あのむさい男」、「クリエイターとして何らかの欠陥があるのかな」、「頭の中お花畑の●●」(●●は原告夫の名前)、「家でゴロゴロする何もできないヒモ男」、「だからヒモ男 つってんだよ」、「●●ヒモ男 ▲▲15 君」(●●は原告グループ名、▲▲は原告夫の名前)と述べるものであり、原告夫の名誉感情を侵害するものであると認められる。ところで、他人の名誉感情を侵害する行為については、それが社会生活上許される限度を超える侮辱行為であると認められる場合に、当該他人の人格的利益の侵害が認められ、不法行為が成立すると解される。そして、上記認定に係る個々の発言自体は、意見ないし感想として述べられているものではあるものの、被告は、本件動画1において、原告夫に対する名誉感情を侵害する表現を執拗に繰り返していることからすれば、本件発言1は、社会生活上許される限度を超える侮辱行為に当たるというべきである。したがって、被告による本件発言1は、原告夫に対する不法行為に該当する。
証拠(甲15、16、29)によれば、被告は、本件動画5において、原告妻の病気につき、原告らが出した診断書に怪しいところがあることや、原告妻がステージ4のすい臓がんを患っているにもかかわらず、大量の食事を摂取していることなどを理由に、原告妻が本当にステージ4のすい臓がんを患っているのかについて、視聴者が疑問に思う状況が生じていることを共同配信者に説明し、その中で、本件発言5のとおり、「もともと回復の見込みがある癌なんです あえてステージ4って言ってお金を集めるためにやっている」、「そもそも詐病なんじゃない」などと述べているものであり、被告によるこれらの発言は、原告らが、原告妻の病状を深刻なものと偽り、金銭を集めているとの事実を摘示するものであると認められる。そして、本件動画5における被告の説明も踏まえれば、上記被告の発言は、これを聞いた視聴者に対し、原告妻の病気が金銭目的の詐病であるとの印象を与えるものであるから、原告らの社会的評価を低下させるものであると認められ、本件発言5は名誉毀損に当たるというべきである。したがって、被告による本件発言5は、原告らに対する不法行為に該当する。

