実施可能要件
特許法第36条第4項第1号には、当業者が発明を実施できる程度に、明細書に発明の内容が明確かつ十分に記載されていること(実施可能要件)が規定されています。今回は、この実施可能要件が争点の一つとなった事例を紹介します(令和7年(行ケ)第10055号 審決取消請求事件)。明細書に記載が十分でなくても、公知技術を適用すれば実施可能要件を充足することがあります。
(要旨)原告は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例が不適切であり、ひいては記載された薬理データ自体が不適切というべきであるから、当業者は、本件各訂正発明に係る組成物が薬物誘発性便秘の処置に有効であるか否かにつき、過度な試行錯誤を余儀なくされるとして、実施可能要件違反がある旨を主張する。しかし、既に述べてきたとおり、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例が、薬物誘発性便秘の改善を評価する手法として適切さを欠くとは認められず、本件明細書には、動物実験の結果がデータとして具体的に示されている。また、本件PGE1化合物については、本件明細書の記載のほか、甲3などの公知技術により、当業者が過度の試行錯誤を要することなく製造することができるものである。

