無効理由の抗弁
特許法第104条の3第1項は、「特許権や専用実施権が無効とされるべき場合、権利者はその権利を侵害者に対して行使できない」ことが規定されています。つまり、特許権に無効理由がある場合は、特許庁が無効審決を下して特許権を無効にしなくても、裁判所の判断で権利行使が制限されます。今回は、この条項が認められて権利行使できなかった事例を紹介します(令和 6 年(ワ)第 70539 号 特許権侵害に基づく損害賠償請求事件)。無効審判を請求して無効審決を待っていると訴訟が長期化するため、平成16年改正で追加された特許法第104条の3第1項の規定により、裁判所は迅速かつ公平に紛争を解決できます。
(要旨)丙 30 発明の非燃焼式シガレットにおける中空部及び冷却部の各壁部(肉厚部分)は、「タバコロッドの移動を防止する支持部」(1b)の構成を有するものと認められる。…丙 30 発明における流入口(中空部の空洞構造とタバコロッドが当接する部分)と流出口(冷却部の貫通孔とフィルタロッドが当接する部分)の前記被加熱芳香カートリッジの長手方向に垂直な断面の形状は、相似な円形状であるものが少なくとも含まれるといえる。…丙 30 文献の記載によれば、丙 30 発明における流入口と流出口の空孔率の差は 0%以上 93.75%未満となり、本件発明 2 の構成要件 2A における空孔率の差の数値範囲(19~69%)は、これに含まれている。…本件特許は、特許法 29 条 1 項 3 号に違反してされたものであり、特許無効審判により無効にされるべきものであるから(同法 123 条20 1 項 2 号)、原告は、被告に対し、本件特許権を行使できない(同法 104 条の3 第 1 項)。

