確認の訴え
不法行為に基づく本件損害賠償請求債権や差止請求権の不存在確認訴訟の訴えがなされることがあります。今回は、確認の訴えにおける確認の利益が認められなかった事例を紹介します(令和7年(ワ)第70184号 債務不存在確認請求事件)。確認の利益は、その確認訴訟に関して不安や危険を除去するために必要な場合に限り認められます。
(要旨)確認の訴えにおける確認の利益は、即時確定の利益がある場合、すなわち、判決をもって法律関係の存否を確定することが、その法律関係に関する法律上の紛争を解決し、現に当事者の有する権利又は法律上の地位の不安、危険を除去するために必要かつ適切である場合に限り認められる(最高裁昭和27年(オ)第683号同30年12月26日第三小法廷判決・民集9巻14号2082頁、最高裁昭和44年(オ)第719号同47年11月9日第一小法廷判決・民集26巻9号1513頁)。これを本件についてみると、原告は、本件利用行為について、被告の原告に対する不法行為に基づく本件損害賠償請求債権及び本件不当利得返還請求債権の不存在の確認を求めているところ、前提事実⑶で認定したとおり、被告は、令和8年3月10日に行われた本件第6回弁論準備手続期日において、本件利用行為により原告が経済的利益を得ていないこと及び本件利用行為そのものにより被告に損害が生じていないことを認めるとともに、本件損害賠償請求債権及び本件不当利得返還請求債権を放棄する旨陳述したことが認められる。以上によれば、被告の原告に対する本件損害賠償請求債権及び本件不当利得返還請求債権が存在しないことは被告の自認するところであり、この点について、現に当事者間に紛争が存在し、原告の有する権利又は法律上の地位の不安、危険が存在しているとはいえず、即時確定の利益があるとは認められない。
2 原告の主張について
原告は、原告の研究活動に関する処分の解除及び本件に関する原告の名誉や信頼回復のためには、原告と被告との間において、原告が被告に対して少なくとも法的には違法なことを行っていないことを判決によって確認する必要がある旨主張する。 しかしながら、本件訴えは、本件損害賠償請求債権及び本件不当利得返還請求債権の不存在の確認を求める訴えであり、原告の研究活動に関する処分の解除及び本件に関する原告の名誉や信頼回復を求めるものではないから、被告が確認することが必要であるとする対象は理由中の判断その他本件における訴訟物外の事情にとどまり、本件損害賠償請求債権及び本件不当利得返還請求債権が存在しない旨の確認判決を得ることが、原告の主張する権利又は法的地位への危険又は不安を除去するために必要かつ適切であるということはできない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。

