識別力が否定された事例NO9
拒絶査定不服審判で商標法第3条第1項第3号の識別力がないとして拒絶審決が出された事例3件を紹介します。ここまで不成立になると、識別力が無いとして拒絶査定されると不服審判請求をしても意味がない気がします。
(1)「The Admissions Office」の文字を標準文字として第35類「教育機関が行う入学者の募集及び選抜に関わる複数の業務を一括して管理するインターネットシステムによる入学者の募集に関する事務処理の代行等」を指定役務とした事例
これに接する需要者は、主に教育機関の関係者であると想定し得ることからすると、本願商標は、その構成全体より、「(その、この、あの、例の)大学で、学生の募集から選抜までの実質的な業務を遂行する入学事務局」ほどの意味合いを容易に認識させるものと認められる。加えて、別掲2のとおり、大学における入試や入学関連の事務を含む大学事務の代行の役務が提供されていることが認められる。そうすると、本願商標を原審補正役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、アドミッションズオフィス(Admissions Office)、すなわち、入学事務局の事務処理を代行して行う役務であることを強調表示したものと認識、理解するにすぎず、単に役務の質、提供場所を表示したものと理解するにとどまるから、本願商標は、自他役務の識別標識とは認められないと判断するのが相当である。
(2)「athlete Chiffon」の文字を標準文字として第30類「菓子等」を指定商品とした事例
前半に「athlete」の文字と、後半に「Chiffon」の文字とを組み合わせた「athlete Chiffon」との文字からなる本願商標は、これに接する取引者、需要者に、「運動選手向けのシフォンケーキ」程度の意味合いを認識、理解させるものであるから、これをその指定商品中、「運動選手向けのシフォンケーキ」に使用しても、これに接する取引者、需要者に、商品の品質を表示したものとして認識させるにとどまり、本願商標は、自他商品の識別標識としては認識し得ないというのが相当である。請求人は、本願商標は、「athlete」の頭文字「a」は小文字、続く「Chiffon」の頭文字「C」は大文字となっており、「athlete」が「Chiffon」の形容詞的なものではないから、「athlete Chiffon」は、商標法第3条第1項第3号でいう「普通に用いられる方法」に該当しない旨主張する。しかしながら、本願商標は、標準文字からなるものであって特にデザイン化等が施されているものではない上、「athlete」及び「Chiffon」の2語からなるものと容易に看取されることから、普通に用いられる方法で表示してなるものと認められる。
(3)「スマート検診」の文字を標準文字として第35類、第42類及び第44類を指定役務とした事例
本願商標は、「スマート」及び「検診」の文字の意味や、上記取引の実情から、全体として「ITや電子機器などの先端技術が導入された検診」ほどの意味合いが容易に理解されるものである。そうすると、「スマート検診」の文字からなる本願商標を、その指定役務に使用したときには、これに接する取引者、需要者は、「ITや電子機器などの先端技術が導入された検診、ITや電子機器などの先端技術が導入された検診のための役務」であると認識するにとどまり、本願商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示したものと認識するというのが相当である。