意匠類否判断を考えてみましょうNO26
「米宅配用袋」について、共通点と相違点の文字情報から本願意匠と引用意匠は似ていると思いますか?答えは似ている(類似)と判決されました(令和7年(行ケ)第10087号 審決取消請求事件)。意匠は登録されないと公開されず、判例にも図面が載っていないことから、今回は文字情報のみです。
(要旨)(ア) 共通点
a 全体は、折り畳んだ状態において、上端を開口した正面視略縦長長方形の薄厚の角底袋で、正面側上端に両角を小さく斜めに切り欠いた略横帯状のフラップ(封緘部)を一体状に形成している点
b 全体の縦(高さ)、横の長さの比率は、約2:1で、フラップの高さは、全高の約1/13である点
c 正面の中央やや下側に“お米宅配袋”の大文字列、そのすぐ下に内側に“10kg”の大文字列を配置した略横長長方形太枠を形成し、下方寄り中央付近に右斜め下向きの矢印とその上側の左寄りに小文字列を2段に形成している点
d 模様は黒色である点
(イ) 相違点
a 本願意匠は、背面の上端両隅から略直角台形状のマチの先端が突出しているのに対し、引用意匠の背面視における態様は不明である点
b 色彩について、本願意匠は特定の色彩はなく暗調子であるのに対し、引用意匠は薄茶色に着色している点
そこで両意匠の共通点について検討すると、まず共通点 a について、全体を正面視略縦長長方形の角底袋とし、上端に両角を小さく斜めに切り欠いたフラップ(封緘部)を形成した態様は、両意匠の骨格を成すものであり、共通点 b の長さの比率、共通点 c 及び共通点 d の模様における態様と相まって、これらは需要者の注意を強く惹くものといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。共通点 b については、その種物品の分野においては様々な構成比率のものが存するとみられるところ、全体の縦横の長さの比率を約2:1、フラップの高さを全高の約1/13とした点は、全体的な観点からして両意匠の共通性を強めるものであり、この点も、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものといえる。共通点 c については、文字列の内容は、意匠の類否判断に与える影響は小さいものの、記号と合わせて、それらの模様は、需要者が関心を持って観察する部位に係るものであるから、これらの共通点が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。共通点 d についても、模様をすべて黒色とした点は、共通点 c が与える印象をより強固にするものであるから、この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は少ないとはいえない。一方、両意匠の相違点について検討すると、相違点 a について、本願意匠は、背面の上端両隅から略直角台形状のマチの先端が突出しているのに対し、引用意匠の背面視における態様は不明ではあるものの、引用意匠に係る写真のうちの正面側斜視写真には、袋の側面にマチが表れており、一定容量の物を封緘することを前提とした米宅配用の袋にマチがあることは通常のことといえ、本願意匠の背面に表れたマチの形状について、特段の意匠的特徴のあるものとはいえないから、相違点 a が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものといえる。相違点 b については、両意匠ともに明度は同程度であり、両意匠について需要者に別異の印象を起こさせる程のものではないといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。こうした両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、両意匠を全体として総合的に観察した場合、両意匠は、共通点 a ないし共通点 d が、前記ウのとおり両意匠の類否判断に与える影響は大きいのに対し、相違点 a 及び相違点 b が両意匠の類否判断に与える影響については、前記エのとおり小さいものといえる。したがって、これら相違点が相まって生じる視覚的効果を考慮しても、共通点が与える共通の印象を覆すには至らないから、両意匠の形状等は類似する。そうすると、前記需要者の観点からみた場合、両意匠は類似するというべきである。これと同旨の本件審決の認定及び判断に誤りはない。

