属地主義
パリ条約4条の2には、各同盟国における出願、特許は、同じ発明についての他の同盟国等(同盟国以外の国を含む)における出願、特許と独立したものであることを規定しています(属地主義)。今回は、意匠侵害の関係で属地主義の原則が言及された事例を紹介します(令和5年(ワ)第70083号 意匠権侵害損害賠償請求事件(第1事件)、令和6年(ワ)第70246号 意匠権侵害損害賠償請求事件(第2事件))。他国で製造・販売された商品は日本の意匠権侵害とはならず、日本国内で流通している商品があるからといって意匠権の効力を及ぼすことは属地主義の原則に反すると判断されました。
(要旨)弁論の全趣旨によれば、被告らにおけるスライダー等の製品の製造は、中国など日本国外において行われており、その販売も日本国外の縫製工場や商社に対するものであって、日本国内における製造、販売があるとは認められないところ、被告らが日本国外において製造、販売したスライダーがどのような製品に用いられ、どの地域で流通するのかなど、それ以降の商流については本件における全証拠によっても不明といわざるを得ない。
そうすると、仮に被告らの製造、販売するスライダーの意匠が本件意匠に類似するものであることが認められたとしても、当該販売行為自体は日本国外で行われているものであるから、意匠権についての属地主義の原則に照らし、本件意匠権の効力は被告らによる上記販売行為には及ばず、本件意匠権を侵害するものとは認められない。
これに対し、原告は、被告各製品が付された本件ブランド会社のバッグや財布が日本国内で流通していることをもって、被告らが本件ブランド会社と客観的に関連し共同して本件意匠権の侵害を発生させることになると主張するが、このような場合にまで被告らが共同不法行為責任を負うとすれば、日本国の意匠権の効力が及ばない国外での行為であるにもかかわらず、当該行為の結果が日本国内での侵害行為に何らかの形で結び付きさえすれば、当該行為者に対し、同人の侵害行為に対する関与や認識の程度に関係なく責任を負わせることとなり、実質的に見て、日本国外の行為にまで無限定に日本国の意匠権の効力を及ぼすこととなることから、属地主義の原則を没却するものといえ、失当といわざるを得ない。

