周知商標との誤認混同
商標法第4条第1項第15号は、他人の業務に係る商品または役務(以下「商品等」)と混同を生ずるおそれがある商標を登録できないと定めています。「リニアエクスプレス」を含む2段書き商標が、「リニア中央新幹線」と類似性が高いので、登録できないと判断されました(令和7年(行ケ)第10119号 審決取消請求事件)。
(要旨)(1) 引用商標の周知性
引用商標が、JR東海が開業を計画する本件鉄道の名称として、我が国の取引者、需要者の間で周知であることは、当事者間に争いがない。また、証拠(乙2~27)によれば、本件鉄道は、昭和48年に全国新幹線鉄道整備法に基づく基本計画に位置付けられて以降、長期にわたり国家的プロジェクトとして事業計画及び工事が進められ、本願商標の出願時(令和5年3月30日)及び本件審決時(令和7年9月25日)に至るまで繰り返し、新聞やウェブサイトを通じて報道がされたと認められることからすれば、引用商標の周知性の程度は極めて高いといえる。
(2) 本願商標と引用商標の類似性の程度
外観については、本願商標は、「LINEAREXPRESS」の欧文字及び「リニアエクスプレス」の片仮名を上限二段で表示してなり、引用商標は、「リニア中央新幹線」の片仮名及び漢字からなる。両商標は、文字種、及び上下二段で表示されているか一段で表示されているかの点で異なるものの、「リニア」との片仮名部分は共通している。次に、称呼については、本願商標からは「リニアエクスプレス」との称呼を生じ、引用商標からは「リニアチュウオウシンカンセン」との称呼を生じるところ、「リニア」との部分については称呼を共通にするといえる。最後に、観念について、「エクスプレス」とは「急行列車」を意味する語であるから(甲2)、本願商標からは「リニアという名称の急行列車」との観念を生じる。一方、引用商標の「新幹線」は、急行列車のうち、JRが運行する全国の主要都市間を結ぶものを意味するから、引用商標からは「リニアという名称のJRが運航する急行列車」との観念を生じ、両者の観念は近似する。これに加え、本件鉄道は、平成元年頃より、「リニア・エクスプレス」、「リニアエクスプレス」、「Linear express」、「中央リニアエクスプレス」の別称で、書籍やウェブサイトで表示され、これらの別称が定着していると認められること(乙4~27)からすると、本願商標に接した取引者、需要者は、「リニアエクスプレス」「LINEAREXPRESS」いずれの表示からも、本件鉄道、すなわち「リニア中央新幹線」を観念するということができる。これらを総合すると、本願商標と引用商標の外観及び称呼は「リニア」との部分で共通する上、観念は同一であるから、類似性の程度は高いといえる。

